吉見俊哉『ポスト戦後社会―シリーズ日本近現代史⑨』

2010/8/24(火)
じつは、休学していた学生と面談しようとおもっているのだが、その学生からなかなかメールなどが来ないので、家で読書や新学期の準備などぼちぼち。

吉見俊哉『ポスト戦後社会―シリーズ日本近現代史⑨』(岩波新書、2009年)を読んだので少し丁寧なメモを作る。政治学概論Ⅱで、大平正芳に焦点を当てて授業をする予定なのだが、その前段で、大平内閣の頃が、ちょうど、吉見さんがいう「戦後社会」から「ポスト戦後社会」への転換点にあたるとおもわれるので、マクロ的にまず始めようとおもって、作ったメモ。以下、自分のために:アップ

吉見俊哉『ポスト戦後社会―シリーズ日本近現代史⑨』

はじめに
ポスト戦後社会 Post-Postwar Society
 日本の「戦後」といわれる時代は、GHQ占領期で(高度成長期に入って)終わったといわれることもあるが、
《60年代の高度経済成長は、・・・戦時期を通じて強化されてきた総力戦体制の最終局面でもあった》pⅲので、「戦時」体制の連続性として、「敗戦と占領の数年間からそれに続く復興と高度成長、社会の再構築プロセス」pⅳ(つまり、「戦後」社会)をとらえる。

【戦後社会】理想と夢の時代・・・70年代初めまでは、現実の彼方にある理想(夢)をもっていた:それが、社会主義であれ、アメリカ流の物質的豊かさであれ シンボル(東京タワー)

【ポスト戦後社会】虚構の時代・・・80年代以降の日本社会は、リアリティの脱臭に向けた浮遊する虚構(の言説) シンボル(東京ディズニーランド)

【戦後社会】→【ポスト戦後社会】
理想と夢の時代→虚構の時代
重化学工業→情報サービス産業
都市化→郊外化  核家族の高齢化+少子化
幅広い中流意識→社会的・経済的格差(「収入や資産、将来性の格差が目に見える社会」pⅶ)
【グローバリゼーション】・・・ポスト戦後社会の原動力
ポスト冷戦
新自由主義・・・規制緩和、民活、ポピュリズム


第1章 左翼の終わり
【戦後社会】労働運動・左翼政党 学生運動→連合赤軍事件へ

【ポスト戦後社会】ベ平連やウーマンリブ・・・「一人ひとりの個の肯定から出発する穏やかなネットワークが、いくつかの個別イシューをめぐる新しい社会運動のスタイルとして浮上」p40
他方、沖縄では「祖国復帰」の意味が大きく反転し、反復帰論のように「日本=国家」の呪縛を根底から問う視点が浮上 沖縄復帰1972.5.15


第2章豊かさの幻影のなかへ
1970年日本万国博覧会 広告代理店(電通、博報堂、東急エージェンシー)
ディスカバ-・ジャパン 国鉄の広告(電通)
流通革命、消費空間の演出、女性誌、ぴあなどセグメント化したメディア
渋谷パルコの都市演出、西武百貨店などの広告 70年代~80年代へ

ポスト戦後(国土空間的、政治的)
「農村の保守層を基盤とする福祉国家型の開発主義が力を失い、次第に大都市の保守層を基盤に金融やサービス、メディア産業とともに結びついたネオ・リベラシズムがヘゲモニーを確立していった」p62

戦後政治:池田勇人「所得倍増」→田中角栄「列島改造」 高度成長による利益配分型政治
(+労働組合と社会党:福祉国家主義的補完政策 国民全体が広く浅い利益配分にあずかる)
 ↓ 
ポスト戦後政治:中曽根康弘政権→小泉純一郎政権 新自由主義(自由市場主義、市場原理主義)

「それまでの重化学工業ベースの社会から、サービスや情報がベースの社会に変化していく過程で、労働組合の組織力や政治的な影響力が不可逆的に低下していった」p74
労働組合の退潮→社会党や共産党、革新自治体の基盤の弱体化


第3章 家族は溶解したか
日本人の意識調査の変容 
夫唱婦随(性役割分担)・家庭育児専念派→家庭内強力(夫婦自立)・家庭と職業両立派
郊外化と核家族の閉塞 
 ロードサイド・ビジネスの増殖、どこまでも広がる「郊外」
 プレハブ住宅 1977年『岸辺のアルバム』(山田太一)

永山則夫連続ピストル射殺事件(1968)「まなざしの地獄」
 ↓ 
虚構の時代の犯罪(宮崎勤幼女連続殺人事件1988-9、1997年神戸連続児童殺傷事件)「他者のまなざしの不在」

《「昭和」の終わりは、ある国民共同体の時代の終わりであった。その後に来る「平成」は、その字義上の意味とは正反対に、それまで「天皇=祖父」によってピン止めされていた自己意識が、大きく拡散と統合の間で揺れ動き、分裂ないし空洞化していく可能性を孕んでいた》p116


第4章 地域開発が遺したもの
反公害から環境保護へ 
環境庁の誕生→環境行政の後退(1976年石原慎太郎環境庁長官、石油ショック)
地域開発とリゾート開発の結末
大規模工業基地建設  全国総合開発計画1962 → 新全国総合開発計画(新全総)1969
日本列島改造論・・・農工両全

「・・成算のない巨大工業基地建設に突き進んでいった新全総に対し、70年代末、田園都市国家と定住圏の構想を掲げて大平正芳政権が策定した三全総は、それまでの開発中心主義を見直し、「環境」を重視しつつ「地方分散」(格差是正)を可能にする道を探ろうとするものであった」p134

中曽根政権 「自民党が都市部でも支持層を広げていくなかで、中曽根首相はあからさまに大都市=強者中心の政策を掲げ始める」p138
民活法(1986)、リゾート法(1987) 
→夕張市の悲劇(炭鉱から観光へと無理をした)

反開発運動→まちづくりへ(田村明『まちづくりの実践』)
《住民たちは、「ふだんはその価値に気づかず、いつまでもあるものとおもっていたのが、ある日突然に失われそうになってその価値に目覚」める。・・・経済成長政策のなかで浮上した開発計画が契機となり、地域住民の目覚めが起こり、反開発運動はまちづくりの実践へと発展し、さらに行政の姿勢も少しずつ変化してきた》p150


第5章 「失われた10年」のなかで
震災・オウム・バブル崩壊
神戸式都市経営の脆弱さ
「オウム真理教の傾向は、外的なリアリティ全体の否定、自立した虚構世界への集団的内閉」p164
バブル・・「投機的な思惑による土地、株式などの資産価格の急激な上昇」p166

国鉄分割民営化から郵政民営化へ
国鉄分割民営化・・・赤字債務の解消、労働組合における公共部門セクターつぶし
郵政民営化・・・財政投融資の縮小による小さな政府・民活化、公営郵便局の地域貢献役割の否定

「経済的な下層に生まれた人が努力と才覚で成功していく可能性は休職に小さくなっていった」p188
新しい産業体制では、企業内能力向上と年功序列型職種は減少
 ↓
専門的能力を必要とされる職種と、マニュアル通りに働くだけで能力向上が不要の職種の二極分解が進行
 ↓ <労働者派遣法(1986)の範囲拡大>
拡大する非正規雇用 正規雇用と非正規雇用との間の社会的格差の拡大 正規職員の長期間勤務とノルマ増大と非正規雇用の労働者の低賃金化と契約期間の短縮

少子高齢社会の到来 限界集落のみならず、限界社会が出現するのでは?という危機感あり


第6章 アジアからのポスト戦後史
グローバル資本の一部としての「JAPAN」 ⇔ 崩壊する地場産業や限界的農村でもがく「国土」
文化移民(日本からの脱出)の拡大 ⇔ 急増する流入外国人


おわりに
あとがき
(「日本近現代の時間や主体が自壊していく」)「過程を促してきた最大のモメントはグローバリゼーションだが、国内的にみるならば、高度成長期からの開発の徹底、地域開発からリゾート開発への流れのなかで列島の自然は深刻なダメージを受け、これに産業空洞化が追い討ちをかけた。家庭レベルでは、果てしなく広がる郊外に自閉する核家族のなかで、若者たちは内的自我を空洞化させてきた。新自由主義は、「豊かさ」の幻想を打ち砕き、「格差」の現実を私たちに突きつけている。」p239-240

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by kogure613 | 2010-08-24 23:01 | こぐれ日録 | Trackback | Comments(0)

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