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アンソニー・ギデンズ+渡辺聰子著『日本の新たな「第三の道」―市場主義改革と福祉改革の同時推進』

【読書メモ】を授業準備の一環でつくる。前期の復習をかねたものになるだろう。

以下の本は、社会学者二人からみた政治論なので、政策論議の具体性はあまりない(もちろん、政局論、政治過程論とは違うもの)。考え方の整理、とくに、イギリスの動きがわかる。ただ、この前のイギリスの政権交代についてはまた調べる必要があるな・・・
アンソニー・ギデンズ+渡辺聰子著『日本の新たな「第三の道」―市場主義改革と福祉改革の同時推進』ダイヤモンド社、2009.11.27

表紙裏「日本は、資本主義経済と議会制民主主義の歴史においては後発国であるが、それゆえに西欧諸国の過去一世紀の経験に学び、彼らと同じ轍を踏むことを避けることができる。/ 今後、日本が経済再生を果たし、市場の繁栄と健全な福祉制度を両立させ、激しく変化する世界の中で自らの意見や立場を主張していくということはけっして容易ではないだろう。しかしそれは「可能である」と私たちは考える。・・」

まえがき
《 欧米の歴史を見ると、「平等」と「効率」のどちらかを優先するか、つまり社会民主主義的な「福祉国家主義」と新自由主義的な「自由市場主義」とは、サイクルを成して移り変わっている。》pⅱ

第1章21世紀の新たな社会モデル
《 過去数十年にわたってすべての先進国で進行してきたこの「脱工業化」という現象は、21世紀になって新たな段階に突入したといえる。この新たな社会的段階は、地球環境との共生を基本原理とし、低炭素産業ともいうべき環境・グリーン産業に牽引される「低炭素産業社会」であろう。》 p2

《 市民は、権利に伴う責任を自覚し、その責任を果たすことを求められる。つまり低炭素産業社会においては「倫理的個人主義」が支配的な価値観となる。また、自然を保全し、自然と共生しながら自然を回復できる範囲内で生産活動を行うという自然共生主義も重要な価値観となる。さらに脱物資主義、反権威主義、自己実現主義など脱工業社会において一般的となったポストモダン的価値観は、新しい低炭素型社会にも適合するため、影響力を維持し続けるであろう。》p7

《 成熟した市民社会を支えるのは、社会的責任があり、自省することのできる、健全な批判精神を持つ成熟した市民である。つまり、幅広い基礎的な知識を習得し、そうした教養に裏付けられた思考力を持つ成熟した市民を育成することがこれからの教育に求められているのである。》p29

第2章グローバル・ガバナンスの構築に向かって
《 グローバル化が不可避であることは、今や多くの人が認めている。しかし今後グローバル化が進むとどうなるのか、世界市場がどのように展開していくのか、そして各国の経済がどのように対応していくのか、誰が勝者になり、誰が敗者になるのか、見通しは不透明である。こうした未知と不確実性に対して不安を感じる人も多い。》p55

第3章「第三の道」と日本の選択
《 小泉構造改革は、もともと米英に比べて市場主義メカニズムがあまり浸透していなかったニッポンに、それを急激に導入しようとするものであった。また欧米のいわゆる「福祉国家」体制を経験していない日本では、社会福祉制度などのセーフティネットの整備は遅れている。そのため改革の副作用は、米英以上に衝撃的なものだった。》p68

《・・「第三の道」の実現は必ずしも容易ではなかった。まず第一に「中道」政策が多数派の支持を得るんもは、きわめて難しいからである。「第三の道」とは、新しい右派(新自由主義)と旧い左派(古典的な社会民主主義)の二つの流れのなかから、いずれとも異なる新しい路線を見出そうとするものである。》p83

第4章「欧州社会モデル」からの教訓
4-3新しいモデルの課題と展望 p159~162
①ネガティブな福祉からポジティブな福祉へ
   教育と学修、繁栄、人生選択、社会や経済への活発な参加、および健康な生活を促進
②市民の積極的な同意
③リスクの創造的利用
④受益者の貢献
⑤脱官僚的・・・脱中央集権化と地方への権限の移譲を促進し、生産者の利益に勇敢に抗する
   脱官僚化の努力は民営化とは明確に区別。
   民営化は、これらの目標を追求するための潜在的な手段の一つにすぎない

第5章新社会への価値観変革―環境とポジティブ・ウェルフェア

by kogure613 | 2010-08-31 13:14 | 研究テーマ・調査資料 | Trackback | Comments(0)

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