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コトリ会議『おなかごしのリリ』『はなの台ふき』、A級MissingLink『あの町から遠く離れて』

2014/5/31(土)
3本、演劇を堪能した暑い日。
コトリ会議の2本目まで、間があったので、伊丹市の古い酒蔵の椅子で読書(佐々木和歌子『やさしい古典案内』:和歌所という後鳥羽院による文化政策とか連歌の話など実に言語芸術営史への手がかりいっぱい)後、荒木村重ゆかりのイベントでラムネと鶏の麹焼き。

コトリ会議は、今年2月に140分ほどのお芝居(第12回公演)をしている所のようで、でも、ぼくは全く観たことがなく、面白くなかったらどうしようと思って行った。が、テンポのいい会話劇を同じ舞台美術(柴田隆弘)さんで観て、なるほど、同時に2つの異なる戯曲を書き、演出するという力を試しつつ、どちらも(6名ずつの登場人物、『おなかごしのリリ』はあと10分ほどあってもいい気がしたが))ちゃんとひとつでも堪能させる能力のある劇作家・演出家としての山本正典さん(1982年福井生)という人を応援するAI・HALLの提携事業(次世代応援企画)だけはあるなと思った。

コトリ会議演劇公演13回め『おなかごしのリリ』。13:05~14:20。・演出: 山本正典。コトリ会議のメンバーとしては、若旦那家康という役者と牛島千佳という役者さんがいて、あとは客演だったりフリーだったりで6名。恋愛中心なので、僕はそんなに自分事としてはぐさりとこないので、楽に見ている。

はじまる少し前から死んだ印を頭につけた女性が登場。前説での舞台設定説明が逆に珍しい。
そうそう、客入れのBGM音響が、ラジオかなにかの解説で、夢とは何かをしゃべっていて、それといっしょに、小さめの音のギターが即興風に流れていたりしたが、あとで音響(佐藤武紀)さんのツイッターを見ると生で弾いていたということのようだった(細かな所でも色々あるんだなあ)。

山奥。集団自殺のあとの意外に明るい会話がはじまる。自由に出かける遠い世界へ行く前のあれこれ。よく映画などにもされるもので、おなじみといえばおなじみ。でも、ビターなおかしさがあるし、温泉とか伊勢海老の生け簀とかがとっぴなだけに楽しい。

そういえば、アメリカザリガニをスルメを餌にAI・HALLの近くの溝でつっていて、きっと、繁殖させているのだろうとまちおこし的な目線で観察したのは、もちろん終わってからの偶然であるが、おかしい。

同じくコトリ会議『はなの台ふき』14:04~17:27。・演出: 山本正典。
こちらは、娘二人の夫婦4名の家族に娘の男が二人という6名のお芝居(コトリ会議の役者さんは要小飴)なので、どうもこちらとしてもそわそわしてしまう。それに、まあ、どこにでもあるような、でもないような微妙な設定というのも、何とも巧妙な物語になっている。父親役(岡嶋将秀)の冷静さとパニック障害の併設の有り様も静かな演技だが巧み。

母親の宇宙信仰というのと、長女の鬱になったときのなんでも悪いことは自分のせいにしてしまうということも、結局、因果律を確定したいという恐怖からの信仰心の原点を極端にしたものであるし、だれにでも心当たりが少しはあるから(茶柱迷信を否定するあたりの狂れ方が次女にも共通するところも怖い所)。後半、(出版、布教のサクセスみたいな)荒唐無稽へとちょっと振れてくれるのは逆に救い。振れるという風に漢字変換したが、同時に、振れるは、触れるでもあり降れるでもあり狂れるでもある。

臭い(家族の歴史のニオイ)台ふき。象徴的な題名。「はなの」は、花であり鼻であり華なのか。端にあるものでもある。提喩というのだっけ。『おなかごしのリリ』のほうがより謎かも。「リリ」って亀だったけ?

じつは、これを翌朝に書いているのだが、3本お芝居を見るとやはり混濁していて、「おなか」ごしというシーンは鮮明(ごしというよりも開きだが)なのだが、男根が頭につくというシーンは両舞台ともあったわけで、そこが同時上演の面白さでもあるのだろう。

ウイングフィールドへ。けっこう早く着く。
A級MissingLink第21回公演『あの町から遠く離れて』19:04~20:42。
ウイングフィールド提携公演、第6回むりやり堺筋線演劇祭参加。
【作・演出】土橋淳志
【出演】横田江美、松原一純、細見聡秀、松嵜佑一、林田あゆみ、あらいらあ、緒方晋(The Stone Age)、条あけみ(あみゅーず・とらいあんぐる)、水谷有希。

鳩の餌やり厳禁。太平洋戦争における戦艦の沈没。
3.11に大きなことが起きるという錯覚。
法事のため喪服。停電のコンビニのために、葬儀屋のドライアウスを買ってくる。
検尿のコップでジュースを飲む。活動屋とカツ丼屋。

クジラとゴジラ。アトムとお茶の水博士。チャックときぐるみ。チャックといえば岡本太郎の絵にあったな、そういえば。
昔ばなしと怪獣特撮。玉手箱と放射線。
九段坂と八段坂。そこで待っている。ゴトー待ち。
靴下を脱ぐ。大きな耳クソ。乙姫と亀治郎。
伊豆諸島、フェリー、船長の名前は盛富(セイフ)で、「アンダー・コントロール」「ただちに影響はない」。

僕の前の二人が、もしこれ以上いっぱいきたら立ち見やなとか話している(僕の目から見たら席は結構開いているしまだまだ詰められるのだが、若い人たちは電車の座席でもそうだがぎゅっと肩触れ合って座るのは無理なんだろうな)。隣の女性は溶暗しているのにまだスマホで書き込んでいる。小声で注意。でも、慣れていない人が観客に来ているということなので嬉しいことは嬉しい。影アナの注意でよいのかどうかは些細な事だが要検討。

最初(たぶん)に観たお芝居が、ちょうど地域通貨を考えていた時だったので、印象深い。もちろん、お墓や伝説など僕の興味とここのお芝居にはいろいろ繋がるのだが、観劇としての原点はこの作品なので(神戸アートビレッジセンターからの案内で観た)、メモっておく。劇団のHPより引用:
第6回公演 『MissingLinkの謎を追え!』
2003年1月11日(土)〜12日(日)神戸公演(3回公演)
作品紹介:
場所…田舎のコミュニティーセンター
人物…地域通貨LETSの研究者グループと、過疎化の進む田舎の青年会の有志。他。
物語…①地域の経済とコミュニケーションの活性化のため、地域通貨を導入しようと青年会がLETS型地域通貨を研究しているグループを招待してワークショップ を行う。青年会の人々がロールプレイを通して、資本と貨幣の問題点・地域通貨がその解決に役立つことを学び、一年後に自分たちのLETSを立ちあげるまでをドキュメンタリータッチに描く。
②ワークショップの後日、LETSを通じてコミュニティーセンターでは様々な商品(無農薬野菜・古本 )、サービス(空手や犬の散歩)の交換が行われている。その中で、古生物学を専攻していた大学を卒業し、実家でふらふらしていたAは幼なじみのBにスライドを使ってダーウィンの進化論・ミッシングリンクの存在について教えていた。そんな中、競争のない世界について疑問を持ち、やがて自らも過酷な競争の中に飛び込んでいく決意(コネで大企業に就職)をするまでを叙情的に描く。
③突然、閃光と共に全裸の男がコミュニティーセンターに現れる。自分は未来のLETSから時空転送機で送られてきた兵士で、未来の資本家が送った殺人サイボーグの攻撃から、未来のLETSにとって重要なある人物を守るためにやってきたと語る。この男が、頭の狂った人だと思われてしまい、警察に連行されるまでをコメディタッチに描く。
タイトル…タイトルにあるMissingLinkとは、進化の系譜において失われた繋がりであり、貨幣によって見失われている人と人との繋がりも隠喩している。

by kogure613 | 2014-05-31 22:25 | こぐれ日録 | Trackback | Comments(0)

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