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桐野夏生『I’m sorry,mama.』2004年

2017/7/4(火)

読み終わった。とても爽快なダークワールド。

なんてこんなに明快に最低な人たちを美しく描くことができるのか。
ところで、アパホテルはいまどうなっているんだろう?

ブルーハーツ以来だ。ドブネーズミみたいに~~~

桐野夏生『I’m sorry,mama.』 (集英社文庫、2007年、2004年単行本)。

今日は1限目がこの前の学外授業のため休講。

あれこれ、校務調整。仕事の公平化。担当コマ関係。

他学部のことだが、ある紹介。

いままで知らなかったが、教務部長や学生部長というのは2年任期で再任ができないということで、これはびっくり。2年目でようやくその業務が分かってきたら首か。ちょっと再考してもらう必要があるかも。

参考

I'm sorrymama.』(桐野夏生)_書評という名の読書感想文 | 超書評ブログ.com

http://choshohyo.com/post-358/

<桐野夏生は、なぜこんな小説を書くのだろう、どうしてこんな小説が書けるのか、とよく思います。小説の内容は、およそ本人とは別世界の出来事で、メディアで見たり聞いたりする彼女のイメージとは対極にあるような、凄惨で荒んだ話です。
社会の片隅の、底辺ともいえる境遇の、救いようのない人の業に翻弄される主人公たちを書き続ける理由が何なのか。彼らに課した邪悪さや非情の魂を、どんな手段で手に入れているのか。いつも不思議に思いながら、つい惹き込まれるようにして読んでいるのです。
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行き場を失った女たちが集まる娼婦の置屋で生まれ育ったアイ子は、父親が誰か判らない上に母親にも捨てられた、戸籍のない子供でした。盗癖と虚言癖のある、子供のくせに達観しているような「気持ちの悪い」「嫌な奴」でした。
アイ子の悪行は、成長するにつれてより巧妙で凶悪なものになります。何より救い難いのは相手を選ばないこと、逡巡せず即座に決行すること。相手にはお構いなしに、自分の都合とそのときの気分だけで軽々と人を殺め、家に火をつけます。
アイ子には、自分の非道を反省するという回路がありません。とにかく気に食わない奴は、目の前から排除する。生きて行くために金品を奪う片手間に、次々と殺人を繰り返します。桐野夏生は、アイ子という女を稀代の悪女に仕立てています。
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東中野の焼肉店・錦華苑でアイ子と偶然出会った美佐江と稔は、その日のうちに灯油を浴びせられて焼死します。アイ子は稔と同様、かつて美佐江が福祉施設で面倒をみた子供の一人でした。二人は理由も分からないまま、あっという間に焼き殺されてしまうのです。
冒頭での放火殺人を皮切りに、アイ子の犯歴と汚辱にまみれた半生が語られていきます。
清掃係のアイ子は、ホテルの部屋を借り切って住みついている老婆・猿渡睦子をバスタブに沈めて殺害し、現金を奪います。更に、生まれ育った置屋で人気NO.1だったエミこと栄美子を訪ねたアイ子は、栄美子のいない間に住みついていた男を殺して、栄美子の家を自分の住み家にしてしまいます。
アイ子はお多福顔でやや太り気味、47歳の荒んだ外見の女です。化粧はぞんざいで、どこから見ても魅力的な女ではありません。若い頃、一時娼婦として客の相手をしたことがありますが、それも性に合わず長続きはしません。職業と居場所を転々と変えながら、盗みと殺人を重ねます。アイ子にとって重要なのは目先のこと、将来など考えてもいません。
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非常に醜悪ですが、象徴的なシーンがあります。栄美子の家で出会うアダムと名乗るホームレスの男とアイ子のセックスシーンです。アイ子が働いていた焼肉店から盗んできた牛肉の塊を互いのみぞおちに挟みながら、二人は狂おしく交わります。
二人が動く度に、肉塊が潰れ、捩れ、牛脂と血が洩れて腹がべとつきます。牛肉の臭いで、
アイ子は焼肉店で関係した李との性交を思い起こし、まるで二人に犯されているような気分になります。「特上ロースセックス」はアメリカ兵とやってるみたいで、とても気持ちのいいものでした。
セックスのあと、二人はその肉を焼き、マッカリをたらふく飲みます。睡眠薬入りのマッカリを飲んだアダムが寝入るのを確認すると、アイ子は躊躇いもせず、日本手拭でアダムの首を締め上げて殺してしまうのでした。
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悍ましくて目を背けたくなる光景です。しかし、その醜悪さに私たちは激しく劣情もするのです。常識とモラルに遮られた先にある官能を、人は本能的に知っているのです。
私たちは、正気を失くすほどのエロスに身を任せたいという本音を隠し持っていますが、世間的なモラルを蹴散らかし、淫らな欲望に身を晒すことには到って臆病です。
そんな私たちが秘めた心情を、逆説的にアイ子が代弁しているように思えてなりません。人はどこまで堕ちて行くのか。何をしてアイ子はこのような残虐非道な女になったのか。許すべきことは何で、何を責めるべきなのか。そんなことを考えました。
中盤以降物語はやや滑稽味を増し、その分作り話めいた結果になっているのは残念です。桐野夏生のリアルなグロテスクさをこよなく愛する私としては、いつものこの人らしくシリアスに徹してほしかったという気持ちです。が、いつも桐野夏生の小説の読後感は重い重いと言われている声に応えて、敢えて軽めの設定にした作者の意図やも知れません。>

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桐野夏生『I’m sorry,mama.』2004年_a0034066_07373201.jpg


by kogure613 | 2017-07-04 22:20 | こぐれ日録 | Trackback | Comments(0)

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