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後藤逸郎『オリンピック・マネー』

2020/9/29(火)
読み終えた。
知っていることもあるし、経緯などはそんなに知らなかった。一番、心が痛むのは、都営霞ヶ丘アパートのことだ。
後藤逸郎『オリンピック・マネー 誰も知らない東京五輪の裏側文春新書、2020.4
<新型コロナウイルスの流行で、迷走に迷走を重ねた挙句、東京オリンピックの延期が決定した。国際オリンピック委員会(IOC)がぎりぎりまで延期を口にしなかったのは、秋になるとアメリカでアメリカン・フットボールやバスケットといった人気スポーツが始まるので、テレビ局の放送日程がとれないからだという。
こんなバカな話があるか。オリンピックは世界中の国が集まって行う「スポーツの祭典」「平和の祭典」であり、そのため開催国では巨額の税金を注ぎ込む。それがアメリカのテレビ局の都合で左右されていいのか。マラソンの札幌移転も、東京で涼しい時間帯(未明スタート)に開催しても、暗くてはテレビ中継ができないからだというのだ。
なぜ、こんなことになってしまったのか。本書は、オリンピックが「スポーツの祭典」から、単なる巨大なスポーツ興行へと変わってしまった軌跡を丹念に追う。とくにテレビの放送権料という金の卵を産む鶏の存在が、IOCをいかに変えたのかを検証する。
では、開催国の日本は一方的な被害者なのか。そんなことはない。
オリンピックを錦の御旗に、あらゆる強引な手法が駆使された結果、東京都心で最後に残った閑静な地域、神宮外苑は再開発されることになった。その巨大な利権に群がったのは誰か。再開発地域にあった都営アパートは取り壊され、長年住んできた住民たちは移転させられた。「国策に協力する」という名目で……。
しかし、このような東京五輪の暗黒面が新聞で報じられることはない。なぜなら、新聞もオリンピックのスポンサーなのだから。
世界中がオリンピックが巻き起こす札束の嵐に巻き込まれている。しかし、忘れてはいけない。そのカネはすべて我々の税金なのだ。一年延期で胸をなでおろしている場合ではない。延期の場合、中止よりもさらに巨額の公費が投入されるのだ。>

by kogure613 | 2020-09-29 10:05 | Trackback | Comments(0)

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