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『Hello Horizon』(吉川信幸監督)の中の森衣里さん

この前東福寺の劇場で久しぶりに森衣里さんに会ったので、注文してずいぶんしてようやく『Hello Horizon』(吉川信幸監督)が宅急便で届いたけれど、また見ていないのねえ、というと、是非みてみて、というので、ようやく朝見る。なんだか、この前まちかど芸術のお稽古をしていた森衣里そのままで、あっけんからんといい味出していて、そのうえ、すってんころりん、これって演技だったらかなりすごすぎとか思いながら、雪の地平線を見ていた。彼女以外だが、何だかこれって演技指導できてないなあとかちょっと気になるところもないことはないが、インディーズムービーの朗らかさがロードムービーだから余計に出ている感じ。

そのあと、生協の関係の雑誌のエッセイを昨日をメールで依頼されていたので、すらすら。1時間近くかかったが、「消費社会に身を置いて~学生はその矛盾を感じている~」と題して1000字ほどのエッセイ出来上がり。800字から上限が何字だったか分からないので明日研究室で完成する予定。

近大の授業は、第6章、最後に指定管理者制度について話す。来週で授業としては最後である。第7章「アーツマネジメントの公共性」と第8章「アーツマネージャーへのみち」を1日でしてしまわなくちゃならない。帰って中日が負けて少しがっかりしながら、レジュメを作る。



近大アートマネジメント論/アーツマネジメント総論(その5) 2006年度前期 
1 見取り図(オリエンテーション) 「と」 「間=ま」 「つ」(5つ)
2 アーツマネジメントの定義
3 定義に関する重要なポイント~文化ニーズ、文化力、文化政策、文化芸術振興基本法~
4 まちづくり、NPO、イベントとの関係
5 アーツマネジメント分類~ハードウェアBgのトピックスとして指定管理者制度は第6章へ~
6 アーツマネジメントの諸問題~指定管理者制度実施後におけるアーツプレイスのあり方~
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7.アーツの公共性~芸術の社会的存在根拠とは?
7-1 芸術の公共投資、その根拠づけ理論~市場(マーケット)に任せられない理由~
7-1-1【「なぜ」の視点】
①遺産説       将来の世代に残す
②威信説       国家の誇り 地域アイデンティティ  ふるさとへの愛着
③波及説       地域経済への波及効果 生活の質の向上 教養づくり オプション価値
④イノベーション説  社会・経済への革新的効果 創造都市論 新サービス産業のヒント
⑤社会批判説     市民形成の基点 社会のあり方変革

7-1-2【「どのように」の視点】~格差是正+アクセス権保障説~
⑥地域差の解消
⑦障碍の克服
⑧所得差の解消
⑨体験差(とりわけ子ども)の解消(機会の平等化)~文化資本格差との関係
⑩マイノリティの文化権保障

7-1-3【「なにを」の視点~加藤種男の芸術の社会的公的投資論】   アサヒビールメセナ担当+横浜の文化財団
⑪ 先端芸術重点投資説
7-1-3-1 市場芸術、伝統芸術、先端芸術、限界芸術
市場芸術(かせげるアーツ)=市場が成立するアーツ、つまり、専門家(アーティストよりも仕掛け人)が大衆という非専門家へ届けるアーツ→公的・メセナ的投資は不用: なぜなら、もしメセナすると、市場の混乱が起きるから
伝統芸術(つたえるアーツ):部分的に市場が成立しない→部分的な投資(文化的ニーズに対応するもののみ)
先端芸術(さきっぽアーツ):市場が成立しない→重点的かつ継続的な投資
限界芸術(だれでもアーツ):市場が成立しない、そのものへは投資が出来ない(非専門家が非専門家へ向かうアーツなので)

7-1-3-2 先端芸術をめぐって
○だれも未だ望んでいないものを創りだすこと
○「ありうべからざること」自体の面白さに惹かれること
○「よくわからない、理解できない」から意味があるということ
○わかるものはほっておいてもいい→ほっておくとなくなってしまうものを大切に
○企業も新しい感覚の先取りをする必要(人びとの感性の変化に鋭敏になる必要あり)

7-1-3-3 限界芸術をめぐって
○ほっておくとなくなるもの 市場になじまないもの
○でも、公的メセナ的投資にもなじまないもの
○先端芸術との連携による投資が有効→先端芸術と限界芸術の出会いの場づくりが、加藤種男のメセナ実践となってきた
1)芸術との直接の交通
2) 芸術家との直接のコミュニケーションの場づくり

7-2アーツ政策の存在理由(レゾンデートル)
7-2-1 個人の自由の保障「自分の人生と、自分たちの住む社会は、自分たちで決めて、自分たちで作る。」
アーツマネジメント(アーツ政策をはじめとする文化政策)が、市民社会に貢献する意義
7-2-2公共圏と市民
自立する「市民」の確立⇔公共圏の形成⇔親密圏の多元化(復権)
19世紀以降:親密圏の空洞化(肥大化)→群集的公共圏:メディア的操作とイベント的演出の公共圏
市民的公共圏の原則(①公開性 ②対等性 ③事柄の問題化)→この復権(アーツによる共和制)
7-2-3再度公共圏と親密圏を構築するために
アーツ・リパブリック(再公共圏)⇔コモン・アーツ(マイノリティ・スロー・リバティ・リアル)⇔多元的親密圏


8.アーツマネージャーへのみち
8-1【日常生活からアーツ的視点を探してみよう】
8-1-1意識しなかった景色が、写真に写っていた。
   見ているようで、視ていない。 見る 視る 観る 看る 診る
8-1-2耳には届いているはずの自然の音が、ふと音楽として聴こえてくる瞬間がある。
  音楽ミュージック 音サウンド 声ヴォイス 騒音ノイズ
8-1-3いつも一緒の家族の不在、それによって、関係性(きずな)を思う。
  演劇ワークショップで行う「不在の意識化」・・去った人がいままで座っていた席を意識
8-1-4赤ちゃんの動きを観察すると、子どもは天性のダンサーだときづかされる。
  向こうのプラットフォームにいる人たちを見ていて、群舞に見えてくることがある
  落ち葉が風に舞って、道路上を疾走するのを飽きずに眺めている
8-1-5夢を記述する。電話をしながら落書きをする。
  夢を見た話をする相手の動きを真似るダンスワークショップの面白さ
8-1-6いつもと違う道を歩く。自動車を降りて歩いてみる。
  旅をしてふるさとを想う。冠婚葬祭で人生の筋目、区切りとする。

8-2【アーツマネジメントのプロ化】 アマチュアから遠い道のりを経て・・
 ・外部評価 ・外部資金 ・招待者の検討 ・情報誌への対応 ・広報・プレス担当 ・団体間ネットワーク
8-2-1【プロフェッショナルとしてのアーツマネジメント】
      1)公開性 2)異質な観客 3)批評を受容する 4)表現に対する責任  5)表現を社会に開く
8-2-2【プロとは社会的責任を引き受ける者である】
  responsibility 応答責任 表現についての責任
  accountability 説明責任 応答するだけではなく、社会に向けて積極的に働きかける

8-3【最初の心がけ~アーツマネージャーの重要な役割のために】 
8-3-1 こだわりのジャンルを年間100本以上は鑑賞する
8-3-2 それ以外のアーツを広く見る
8-3-3 観たものすべてについて、メモをとり記録する。2)や3)は客観的に眺める視点を形成するのが目的
8-3-4 アーツマネージャーはつねに「最初の鑑賞者である」
8-3-5 決して外部には口外はしないが「厳しい批評者」にならねばならない

8-4アーツマネージャー十訓
第 1条【多様】 アーツを深く愛し、ジャンルの多様性に対応するため、あらゆる機会を活かしさまざまなアーツに触れる。
マネージャーは、マネジメントするアーティストよりも広く様々なジャンルのアーツに通じていることが、制作したりワークショップを企画したりするときに有効になるのである。

第 2条【体験】 アーツ以外の文化活動、ボランティア、研究調査など実践的体験、フィールドワークを行う。
芸術ジャンルを超えて、広く文化領域、たとえば、スポーツや娯楽、福祉などの知見、体験などがアーツの中だけで完結しがちな現場へ新しい風を入れることができるのである。

第 3条【事務】 経理や法規、顧客管理はじめ、アーツを支えるルーティン事務の大切さを知る。
マネージャーは一言でいって地味なもの。他者の歓びを自分の喜びにできる人でありたい。自己満足でいつも目立っていたい学生には不向きであることを悟らせるのも重要なポイントである。

第 4条【記録】 自分たちのアーツ活動をよく観察し、日記やサイトの形で記録する。
デジカメやビデオなど便利なものがいっぱいあるので、それらを活用することはもちろん必要だし、器械音痴ですなんてカマトトぶっても仕方がない。でも、基本は言葉での記録である。日々のアーツ日記が訓練には一番のものだと思う。

第 5条【表現】 相手に伝えるための平易な表現力(文章術、話術、外国語力)を身につける。
言葉は、それを使い記録すればするほど、短い時間で使いこなせるようになる。アーティストではないので、様々な表現を参考にして文章にし、話術に生かす。さらに外国語ができるなら、それを使う機会を持つ。

第 6条【交通】 交通する(=対話型コミュニケーションを行う)気持ちとメソッドを持つ。
自分たちとは違う年齢層、地域、民族など、多文化との交通が、アーツ環境をずいぶんと豊かにしてくれる。そのためには、語学もそうだが、ワークショップなどアウトリーチの手法を体験して自分のものすることが大切。

第 7条【環境】 アーツを取り巻く環境を意識して文化現場を観察し、企画に活かす。
どうしても劇場なら劇場、美術館なら美術館のなかだけで精一杯になりがちだが、その周囲の環境をよく調べて、企画に活かすことができると、広がりが出てくるし、公演時刻(展示時間)、開催期間や鑑賞者づくりのヒントになることが多い。

第 8条【継続】 変革と継続の大切さを知っている(過去にこだわらず、失敗を未来に役立てる)。
マネジメント力とは、いかに失敗に強いかということでもある。続けるためには変わり続けなければならない。変わるためには、続けなければ変わることも向上することもできない。

第 9条【柔軟】 多文化への適応力と、非常事態に対する柔軟性(余裕、頭の切り替え)を持つ。
予想がつく仕事はそれほど実り多いものではない。突発の事故にも対応していくことで、予想以上の成果が生まれる。

第10条【聴取】 アーティストの力を引き出し、鑑賞者の声をつかむために、臨床的聴取 を常に心がける。
臨床とは、死のベッドに寄り添うことであった。積極的に相手の声を聴く。相手の話に割り込んでいかない。心を澄ませて、アーツに、社会に耳を向けよう。それは、自分の思いがけない声を聴くことにもなる。
by kogure613 | 2006-06-27 22:26 | こぐれ日録 | Trackback | Comments(0)

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