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小津安二郎『小早川家の秋』   

2007/12/28(金)

雨が本降りだ。
正月の食料品の買出しのため、荷物持ちにつきあう。
少し風邪気味なので、生姜の砂糖漬けを口にほうばる。辛い。南京町のおみやげ。
読みかけの本が5冊ほどある。どれから手をつけようかと思っていると、アマゾンの古本がまたやってきて、6冊目に手が伸びる。
未読の本が山積み。未視聴のDVDもけっこうある。

映画館で見たことはあるが、東宝(宝塚映画)なので、松竹セットの中になかった、小津安二郎『小早川家の秋』(1961年、103分)。私たちはこのあと1本松竹で映画を創って(『秋刀魚の味』)亡くなる小津のことを知ってしまっている。でも、小津はそれをもちろん知らない。でも、少しは体調が悪いことは気づいていたのかも知れないし、それよりも、時代の変化によって、いままでのような映画づくりができにくくなったことをひしひしと感じていたように、観ながら思う。

灘の昔ながらの酒造りのオーナー会社が舞台。大きな桶が置かれた道をいそいそ歩くご隠居さん(2代目中村雁治郎の身の軽いこと!)。19年ぶりに愛人に出会って、京都に通いだす。競輪の帰りに、愛人(浪花千栄子)に会ったというが、競輪はどこの競輪だろう(たぶん、灘に近い甲子園競輪場だろうね。2002年3月に廃止。向日町競輪場もすでにあったが、これは灘からはずいぶん遠い)。

関西弁がぴたっとする役者さんとそうでない役者さんがどうしても気になるし、着物の柄とかがどうも東京ぽいようにも思え、溝口健二の描く関西(京都)とは幾分趣が違う。ローアングルの小津流の映画の枠組みは変わらないとしても、イントネーションとか、愛人(妾)宅の下層階級的な趣(成瀬巳喜男映画を思い出させる)とか、松竹の小津映画では出てこない苛立ちとか毛羽立ちが観られて、それはそれで興味深い。

わたし的には、ご隠居さんの長女(新珠三千代)の子どもが、『お早う』の弟役の子役で、「もういいかい」「もういいよ」の繰り返しをおじいちゃんとしているところが大好きだし、画面(中井朝一)がふとフランス印象派みたいに見える箇所が2箇所ほどあって(嵐山の法事シーン)、思わぬ発見をした気になる。

あと、森繁久弥組ということだが、バイブレーヤーとして名高い山茶花究(造り酒屋の番頭さんみたいな役どころで、隠居さんの昔の行状とか、複雑な親類関係に詳しい)をはじめて意識して観た。彼が出る映画を意識してまた観たいもの。そうそう、いま住んでいる八幡市の流れ橋が火葬場への道行き(お骨拾い)として使われていて、昔見たときは流れ橋には行ったことがなかったわけだ。

by kogure613 | 2007-12-28 23:12 | こぐれ日録 | Trackback | Comments(0)

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