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『おくりびと』の『映画芸術』的評価

http://d.hatena.ne.jp/johnfante/20090224

『おくりびと』の『映画芸術』における評価がワースト1というのはすこし驚いたが、
たしかに、後半の安易な映像(チェロを土手で弾いているところ)・脚本(石手紙がとりわけ余分)はじつにテレビ的だと私も思いました
ワースト1が「芸術」評であり、興行成績とか話題性とかの評価ではないので、
そういう批評をしていたのは、面白い現象だなあと思いました。

そうそう、大学に『映画芸術』ありました。2009年冬号、426号。31名がベスト(プラス10点が最高点)とワースト(マイナス10点が最低点)を投票して、それを合計する。

もちろん、『おくりびと』をベスト1に入れている人もいますので、プラス42 マイナス57なのですね。
毀誉褒貶が激しい作品は問題作であり、ある意味議論が活発化するぐらいに重要な作品だともいえます。

同じようなものとして、歩いても歩いても クライマーズ・ハイなどがあります。トウキョウソナタなど、125-44=81点でベスト4ですが、マイナス44点の部分でワースト5にもなっています(寺脇研さんなどがマイナス10を入れて、「訳あり風でたいした含意もない虚仮威し構造」だというようなコメントを入れていますね。確信犯的に)。
いま読んでいるのですが、とりあえず、本誌編集長の荒井晴彦さん(脚本家)のコメントを引用しておきましょう(他にワースト点を入れた方は、内田眞さん、荻野洋一さん、北小路隆志さん、中島雄人さん、藤本洋子さん)。
『おくりびと』は死についての、死んだ人を扱う仕事に対する差別についての映画かと思ったら父と子の和解の石ころの映画だった。それにしても死んだ峰岸徹が握っていた石ころには驚いた。あそこで石ころが欲しいのは作り手も本木雅弘も観客も同じだろう。しかし、峰岸徹はあの石ころをいつも握って生きてきたのだろうか。あるいは息子がやってくると思って死を意識した時にダンボールから取り出して握って死んだのだろうか。ドラマというのは人と人とのそれまでの生が遭遇するところに生まれるのではないだろうか、主人公のためにだけ登場した父親の人生が視えない。峰岸徹はいつ石ころを握ったのか。

2009.3.11、日刊ゲンダイの記事《「おくりびと」をワースト1位に選んだ、専門誌『映画芸術』の言い分、編集部に抗議殺到》の後半部分の引用です:
 それにしてもなぜ、「おくりびと」が“最悪映画”なのか。自身もワースト部門で10点をつけた荒井氏に聞いた。
「同作品は人の死を扱う職業に正面から向き合わず、親子の和解話などに逃げている印象を受けました。石の交換のエピソードも予定調和的で、父親がどんな気持ちで石を持っていたかの説明がない。全体的にご都合主義です」
 新井氏によれば編集部にはネットや電話で「廃刊しろ」「松竹に謝れ」などの批判が寄せられ、米アカデミー賞受賞でさらに激化したという。
・・・・
 なるほど。ワースト1位は「おくりびと」にとって勲章なのだ。

by kogure613 | 2009-03-11 18:00 | どうでもいい話 | Trackback | Comments(0)

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