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柳父章『翻訳文化を考える』⇒「カセット(宝石箱)効果」のマジックワード

2011/12/18
柳父章『翻訳文化を考える』という、1978年に出版局から出た本を読み出している。
ぼくが卒業した年に出版された本で、1972年から78年まで、「思想の科学」や「ユリイカ」などに発表されたものを集めている。

はじめの社会と世間の違いとか「天」と中江兆民がNatureを訳したことなどとかも面白かったが、
そのなかで、「革新思想の「革新」とは何か」が特にあれこれ思うトリガーになった。

「革新」流行の歴史が書かれていて、明治27(1894)年1月に雑誌『国民之友』の巻頭に「革新」という論文が乗っていて、同年同月に立憲革新党と名乗る政党が出たのだそうだ。
このとき政治の文脈ではじめて革新という言葉が初めて登場しもてはやされたという。

「ことばの乱用」、流行現象と柳父さんはいう。多くの場合は漢字二文字で翻訳語が多く、似たような言葉には「改造」があるそうで、大正8(1911)年に雑誌『改造』が創刊されてからやはり「革新」のように多用されたという。

そうそう、「革新」のようなマジックワードの機能ことを柳父さんは「カセット効果」と言っていて、このカセットとはcaseの小さいものという本来の意味の小箱、とくに、宝石箱のことで、宝石箱を見ると、中にちゃんとした宝石があってもなくても、宝物がそこに入っているだろうと、中身を吟味しないで思わせてしまう言葉という意味であって、カセットというと、カセットテープが連想されてしまう自分などは、「宝石箱効果」というほうがいいなと少し理解するのに手間取った。

最近では小泉さんが実に巧妙に使ったことも記憶に新しい「改革」だろうな。自民党が使ったところがミソ(野党になることを見越していたとも言える)。で、改革を阻止するものは、抵抗勢力とかいわれて、マイナスの価値を自動的に付与される。革新や改造の反対は保守とか守旧派とかいわれてきたのだろう。

いまは「維新」なんだろうね。
同じく、乱用されるのが「発信」であるのもいうまでもない。共通するのは、発信が足りない。改造できていない、改革が進まない、革新できない・・というように、その言葉が素晴らしい、正しいことが前提になっているということだろう。

p59に、「革新という言葉の政治勢力的な使い方変遷がまとめてある。

1) 明治から昭和の初期までは・・政治的には自由主義的政治勢力を指していた。

2 )明治初期から敗戦までは・・逆に、反自由主義・反民主主義的勢力を指して使われた(昭和10年前後、一部の右翼、青年将校などが使用。革新官僚という言葉は確か、岸信介さんとかがそうだったはず)。

3) で、戦後、社会主義・共産主義政党が革新勢力となり、1969年以降、民主党や公明党も革新を言い出したということのようだ(たぶん、1970年代までだろう)。

by kogure613 | 2011-12-18 22:46 | 情報収集 | Trackback | Comments(0)

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