平野啓一郎『空白を満たしなさい』下巻を読み終える。
p89に「分人」(ぶんじん)の話が出てくる。ようやく、上巻のゴッホの自画像(耳を切り落とした直後の有名なものと、下巻の一見穏やかそうな黄色い帽子を被った自画像(弟テオの肖像という説もあり)の意味がつかめだす。
p193からはじまる「人間を、死んでも消滅させない方法」を復生者である主人公土屋徹生が提案する話もネット墓とかと関係するものとして興味深い。
死んだ後に残るもの、記憶、記録、遺品、遺伝子、影響。ネット上で、遺族や故人を偲ぶ人の、故人との関係での「分人」に必要なものだけを選んで、隣人として故人を保存するという提案だ。
ドルトン・トランボ(監督・原作・脚本)『ジョニーは戦場に行った』(1971年、112分)。
確かに反戦映画という意味も解るが、生と死のハザマを描いた下意識のドラマという面でも興味深い。小説の方がずっと操りやすいという意味で、小説『空白を満たしなさい』(漫画誌モーニングに連載されていたそうだ)の映画化というのがどうなるのか、という興味も起きる。
西河克己『伊豆の踊子』(1974年、東宝+ホリプロ、82分)は、DVDにて鑑賞。
山口百恵が映画に登場するのは初めてという作品。1959.1生まれだから15歳ぐらいというところか。中山仁さんがいいサポートをしている。石川さゆり(おきみ役)が実際に登場するのは一つの場面のみ。それに、寝ているためかちょっと彼女かどうか分からなくなる感じがする。かほるの櫛を無造作にもらうってなあ川島とか突っ込んだりしながら、でも、身分の違いや旅芸人と農民=定住者との差別感情などが丁寧に描かれていて、興味深い。
(配役)http://www.allcinema.net/prog/show_c.php?num_c=144913
四方方犬彦「第1章 映画女優 山口百恵」、四方方犬彦編『女優 山口百恵』(2006年、ワイズ出版)p36
<…西河が百恵を伊豆半島に連れ出すことができたのは、たった一泊二日にすぎない。撮影期間は全体でわずか22日、しかも百恵がこのフィルムのために割いた日数はわずか7日だった。残余のロングショットや顔の写らない場面ではスタンドインを起用することで処理された。ほとんどの場面が奥多摩で撮影され、それも撮影時間の短さから、丁寧にロケーションを実行することはかなわなかった。>