飯田泰之・木下斉・川崎一泰・入山章栄・林直樹・熊谷俊人『地域再生の失敗学』 NNNドキュメント「汚名 ~放射線を浴びたX年後~」
2016年 06月 29日
飯田泰之・木下斉・川崎一泰・入山章栄・林直樹・熊谷俊人『地域再生の失敗学』光文社新書、2016年
飯田泰之
<各地で行われているまちおこしといえば、B級グルメ、ゆるキャラ、そしてイベントの三つがすぐに浮かびます。「そんなものは“まちおこし”ではない」という木下さんの見解は非常に刺激的です>p24
木下斉
<なぜ地域のためになっていないのか。税金を投入して、一時的にお客さんを集めてはいるけれど、かけたお金以上に地元にお金が戻ってこないことに尽きます。……活性化を目指した事業というのは、自分たちが投じた資源よりも多くの資源が流入しなくてはならないわけです>p24-25
<まちおこし策分野においては、厳しい経済効果議論ってのは「なかなか起きないんですよね。普通に広告効果、経済効果で皆が納得してしまう。…経済効果も足し算・掛け算で増幅して、実態はよくわからない>p26
<外部に頼むのではなく、内発的に小さくてもしっかり黒字になることを徹底した事業を続けること>p32
<行政は、活性化策と福祉政策とを混合して考えてしまうんです。さらに行政のみならず民間ですら同じような思考になってしまいます>p36-37 民間の典型例は商店街
(シャッター商店街の人たちは、豊かでそもそも困っていないので、自分の資産である空き店舗をわざわざ動かさない)
<日本の商業活性化のためには相続課税と、休眠中の事業資産への課税を強化すべきだ>p38
「サプライチェーンを伸ばす、ボトルネックを押さえる」(飯田:45p)
<単なる物販ではなく、製造から販売までを手がけ、さらに提供方法も小売ではなく飲食店に「加工」した瞬間に、粗利益が80%になることさえもある>。p53
「ナイトタイムエコノミー」はモールやネットに代替されないので活性化の近道p54
行政の役割は、補助金を中核企業や商店街に与える「支援」ではなく(p72)
<できないことをできるようにしてくれれば、そこに市場が発生しますので。…使えない放置された公共施設を貸し出してくれたり、道路を使わせてくれたり、公園で事業をさせてくれたり、古い建物のリノベーションの許可を出してくれたりするのが、確実に効果的です>p72「ゼロ予算でいいから」
「規制緩和や許認可の手続きサポートをして、お金は自分たちで工面させる」(飯田p72)
入山章栄
<国全体がフラットにつながるのではなく、特定のエリア都市間の国境を超えたつながりに基づく「ギザギザ状の」グローバル化を、私は「スパイキーグローバリゼーション」と名づけています>p151
<ベンチャーキャピタルの「集約度」と移民のとれには統計的に有意な正の相関がありました。人の相互往来がネットワークをつくり、ネットワークがビジネスを生み出している可能性があるのです。こういう人脈、人材の偏った集積が、起業活動のスパイキーなグローバル化を生んでいるというのが我々の仮説です>p154
<そういう意味では、福岡と釜山の関係はスパイキーグローバリゼーションの典型です>p154
熊谷俊人
「給水車で週に何回か(水を)届けたほうが、おそらくコストはぐっと小さくなりますね」(飯田p283)
<そういうことですね。つまり「水道を引く」ことが目的なのではなくて、「すべての市民に安心して飲める水を安定供給」することが目的なのです>p283
<「商店街がないと買い物難民が出る」という話が決まって出てくるのですが、高齢者が歩いてこられる商店街を維持するためにどれだけのお金がかかるのか。スーパーの配達網もありますし、配達エリアでないのならそこを配達エイアにするための最低限の金額を補助していくほうがずっとハードルは低い。それこそ福祉の一環として、高齢世帯の庭先にドローンで配達するようになるかもしれない>p285-286
http://www.sankei.com/life/news/160430/lif1604300022-n1.html
<政府の肝いりで進む「地方創生」。全国の地方自治体が国の後押しを受け地域活性化策に取り組むが、各地で似たような失敗を繰り返している事例も目立つ。
そこへ現れたのが、「失敗学」を銘打った本書。気鋭の経済学者である飯田泰之・明治大准教授を編者とし、地域経済の現場を知る研究者や自治体首長らへの取材や対談を通じて従来の国・自治体発の振興策の問題点を整理し、民間主導の再生を提言する。4月20日に初版8000部で刊行し、わずか1週間で重版。現在1万3000部と、ネットを中心に好調だ。
そもそも、何をもって地域再生となすのか。本書は「絆」のようなあいまいな議論を退け、地域の平均所得の向上をもって「再生」とする。経済が回らない町は文化どころか地域の維持すらできないわけで、これはきわめて明快だ。
そうした経済合理性に立脚したリアルでシビアな視点を基本に、官民連携の新戦略、過疎地域への対処策などを縦横に議論していく。ゆるキャラやB級グルメ、ふるさと納税など現在の地域活性化の「王道」とされる諸政策がなで切りにされていくのは壮観。地方問題に関心がある向きは、一読の価値あり。>

