照明も静かさも装置もなにもほとんどない状況。一番味方にしたかった青空さえなかった。

5時にめざめて、ベランダに出る。夜に雨が降った模様。でも、いまは微雨。
小ぬか雨降る、御堂筋・・とか歌いながら、コーヒーを入れる。
家を出る頃も、そんなに大したこともなく、レインコートも要らないかなあと思ったが、念のため2つ買っておく。
東野駅を降りて歩いていると、制作のボランティアをしてくれる学生が来たので一緒に歩く。細い道をくねくね行こうとしたが、結局途中で広い道に引き返す。でも、飛び出し注意のおばちゃんとか、お地蔵さんとか、なかなかに趣があるまちかどを観察。

8時24分、西岡農園野菜自販機前に到着。移動カフェができるバンが到着している。雨が次第に本格的になる。大きなテントを小鹿ゆかりさんが借りてくれていたので、予定のアクティングスペースにテントを設営。20ほどのいすを並べると、思った以上に狭い空間になる。

第1編『なすびが笑うか』のシーンをはじめからさらえる。電車内のシーンでエキストラを使うことを断念しようと田辺剛さん。そのあと、道からより離れて、農園のすぐそばの場所へテントを移動する判断を田辺さんがする。これは大成功だった。広くなること、野菜自販機のブーンという低音電気音や自動車の音が少し遠ざかったから。

観劇力のある人や近代建築とまちの関係に詳しい人、それに学生たち。地元の人らしい顔もちらほら。雨にぬれそうになるので、楽な観客にはなれないけれど、20数分間の間、劇場と同じような沈黙を聴取できる時間もあり、他方、野外ならではのスリリングな出会いもあり、雨であるにもかかわらず、ほぼ当初の演劇ができたように思った。

石本径代さんによる弾き語りのはじめ(その前もストリートミュージシャンが路上にいる状態になっていて、早くから来たお客さんは飽きない時を過ごしている)と終わりは、やはり劇時間をくっきりと浮かび上がらせたし、田辺さんがいうように、拡散しがちな観客の目線をくうかんくんの存在によって、焦点を絞る効果が「空間的」にも可能になったのだろうと思う。

岩田由紀さんが、第1編では中心となるのだが、彼女のナチュラルな演技が室外でなんとか可能になったというのも(幾分、声が大きくなったかなあと本人はあとで言ってはいたが)、主催者としては、うれしい限り。

茶水サービスも、雨の中、ちょっとスロースタイルを満喫するということにはならなかったのが、残念ではあったが、おわった後、すぐに他に去らない人たちが、特に2編のあとは多く(子どもたちがわざわざもらいに駆け寄る)、そこにほっこりとしたスウィートがトマトとおからからできていることの不思議をずいぶんと感じ味わっていただけたろうと思われる。

第1編が始まる前に、前から気になっていたみょうが池公園のブランコ下のへこみ(水がたまる)に、ビニールシートをかぶしておいた。雨は時折上がるが、全然やまない。それどころか、14時の『怒りのブランコ作戦』の間中、本格的な雨であった。役者さんには悪いことをしたが、田辺さんの判断で、客席にテントを立て、役者さんはみんな透明のレインコートを羽織っての熱演ということになる。

せっかく、スーツに着替えていた藤本隆志さんやハラダリャンさんも含めて白い集団になった。でも、ブランコを思い切りこぐという野外ならではの演出。そして、公園のトイレから台詞が始まるという、これも、新しい伝説になるかも知れない二人のサラリーマンの絶妙な即興とか、第1編を受けて、これぞ起承転結の「承」であるという積極的な場面展開となった。

「リャンリャン放し飼い」という演出は、伊藤キム放し飼いというかつての企画を思い出させるが、本番では、バッチシ、エネルギーをためたリャンリャンの放散演技を堪能することができ、客席も沸きに沸いた。

第2編では中心となった森衣里さんの可能性がぐーっと広がったということも特筆すべきことではなかったか(主催者とか「制作」はこういうことを言ってはいけないなあと思いつつ、どうしても少しはメモっておきたい気持ちをなかなか抑えられないのである。精密な感情の反転のタイミングの微調整って、こうして出来上がったのかと思うとつい記してしまう)。

竹本康広さんの役柄はどうしても、優柔不断な男子学生として、森さんを引き立てることになる、(第2編へいけば特にそうなる)のだが、その難しい役柄と自分との距離をいい感じで測っている演技だなあと思う。

さて、今日2つとも見ていただいた数名の方は4編全部をごらんいただけそうで、逆に言うと数名しか完全にこの「まちかど寸劇~四角な想いの短編集」を制覇できないというこのレア感が、またまた観劇者の伝説になるなあと思うと、うふふである。

この寸劇プロデュースは、まったくぼくの観たいものを観させてというわがままを成就するためにさせていただいたと改めて思った。こういう人にお芝居を書いてもらいたい。困難さと予測不可能な事態を面白がってくれる演出家と一緒にワークしたい。そういう演出家の演出で、蓄えられた演技力や個性を、劇場以外でも十分に発揮させてくれる役者さんに出会いたい。山科のまちかどに、普段は劇場でしか見られないシーンが現出したらどんなことになるだろう。まちの人たちも、きっと何かを感じてくれるに違いない。・・・・・・・・・

車の中で、藤本さんが、演劇の原点をここで見られた気がする、と言っていただいたのが嬉しかった。照明も静かさも装置もなにもほとんどない状況。客席も雨で作れないし、第一アクティングエリアがぐっと縮小する。

一番味方にしたかった青空さえなかった。でも、ここに確かにお芝居がある。お芝居は、まだまだできる。

かつてお芝居ができていたというかすかな記憶を、どんな地域のどんな場所も持っている。それは、まちかどのお地蔵さんの数だけある。いや、かつて、この辻を通ったすべての人にあったものであると言ってもいいのかも知れない。

++++++++++
銀杏の木で暖かいコーヒー。びしょびしょの上着をかわかす。風邪を引かないように、とスタッフに言ったが自分が危ないことに気づく。ガトーチョコラがはらわたに沁みる。デジカメは雨でだめになったみたい。おかしいなあ、と思いつつ夢中で撮ったからだろう。
そのあと、椥辻駅のそばにできた書割みたいなカレー屋の2階で上記の日記を書く。直後なので、いつも以上に情緒的な文章。performative sentense(遂行的発言文)の代表みたいなものだろう。ぼくには、研究者みたいに、constative(叙述的発言、事実確認文)にはなれないのだろうかとも思うが、これは終わってから大学院の授業ででも考えてみよう(その前に言語哲学をさらう必要があるかも)。

明日のまちかど紙芝居(この日は太陽クラブさんの参加は時間のある方のみ)、そして、23日には一緒に参加してもらって、歌い演奏してもらう予定の太陽クラブさんの例会にお邪魔する。林加奈さんが、まず「ゴマッチのとある一日」を演じる。今日は、本番と同じく、ガムランなどのHANA★JOSS(ROFIT IBRAHHIM、佐々木宏美)が一緒に演奏。一気に幻想的なムードがかもし出される。

演奏の直後、太陽クラブのみんなに、「ゴマッチのテーマソングを作りたいんです」と林さん。すると、ゴマッチはこわ~い、とか、いろいろな意見が即座に出る。それを書き写すだけで、あっというまに、2連の歌が完成する。これには、まいった。すごーいの一言。内緒の振付もできて、やー、ぼくは、このまちかど紙芝居は、こういう場面を目撃したいから、やったのだろうなあと、嬉しい。

つまり、まちかど寸劇は、ぼくが観たいものを観たいという希望の実現であるとすれば、まちかど紙芝居はぼくが観たことがないものを観たい、という驚愕の実現(というか願望)なのである。どちらも、いまはなかなかできないこと。この幸せモノめ!
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Tracked from no size at 2005-10-16 11:54
タイトル : まちかど寸劇はじまりました
まちかど寸劇の公演は前半と後半に別れていて、前半が昨日15日、後半は23日日曜日にある。昨日はあいにくの雨。ほんとにこれがなんとかならんかと、しかし天気ばかりはどうしようもない。上の写真は晴れているが本番の時のものではなくて。実際の本番を写したものは小暮さんのこのサイトにあって、また公演全体の詳しいことは小暮さんのまた別のサイトで僕が書くよりもとても丁寧にレポートされてあるのでぜひご一読ください。... more
Tracked from まちかど芸術 at 2005-10-19 05:07
タイトル : 第1編 「なすびが笑うか」@西岡農園 野菜自販機前
昨晩の天気予想が的中して一日、雨の中での寸劇になりました。 朝の設営は、雨をしのぐためのテントたてや、降り続く雨を考えて、第二編の会場の会場の養生と、雨対策が最優先されました。地面に直にものが置けないことの不便さ。スタッフの白いカッパが何かの実験室みたいになっていて、加えてテントやパラソルが通行する人びとの目線を集めていました。 いつもは自転車やバイクで行き交うこの道も、今日は雨で人通りが少ない。気付いたスタッフが商店会へチラシまきにでかけていきましたが、通る人にもチラシがぬれてしまって渡...... more
Tracked from まちかど芸術 at 2005-10-19 05:07
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by kogure613 | 2005-10-15 17:10 | こぐれ日録 | Trackback(3) | Comments(0)

こぐれのぶお・小暮宣雄 写真は春江おばあちゃんと・サボテンの花嬉しく 


by kogurenob
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