黒川博行『螻蛄』 大阪市芸術活動振興事業助成金事例報告会「アーカイブ編」
2018年 10月 24日
2018/10/24(水)
会議のない水曜日。
行政法の準備。だんだんと条文に慣れてくる。教えようとすると一番学ぶのかもね。行政手続法(1993年制定)とかなかった時代の行政法学の授業って大変だっただろうなあ。行政不服審査法も2014年に全面的に改正されていて、自分的には全く新しい法律。
いま、沖縄県と国の機関との争点の一つが審査請求だ。
夜は、大阪アーツカウンシル関係の仕事。メビック扇町。大阪市芸術活動振興事業助成金事例報告会「アーカイブ編」。
「聞き手」という役柄だった(能のワキみたいなもの)。前シテは、維新派アーカイブス、後シテは、山本能楽堂のアーカイブ。
NISHINARI YOSHIOが活躍。
黒川博行『螻蛄』角川文庫、2015年、2012年新潮文庫より刊行。
この小説シリーズに登場する二蝶会の桑原とサバキ中心の建設コンサルタント二宮の会話が面白くて、つい桑原の言葉が出てきそうになって困る。
p197 「勢羽組ですね」
「おう。おまえもたまには頭がまわるやないけ」
…「不動産屋が信徒総代というのは胡散臭いな」
「東京別院が本山から独立したら、何十万坪という末寺の土地が自由にできるわな」
「石坂のことは稗田さんが調べたんですか」
「あの女は先代のこれやぞ」
桑原は小指を立てる。「おまえが思てるような、きれいなだけの女やない」
「きれいな花には毒があるんですね」
「毒やない、棘やろ」(小暮注:桑原の方が国語力がある)
「あんな棘なら刺されてみたい」
「いっぺん、へそ噛んで死ね」
こんな会話が延々続く。
大阪では自分たちのことを極道といい関東では自分たちをヤクザでいうとあって、ほーとか思うし、横浜で二宮が、昔、「異人さんに連れられて」を「いい爺さん」と思っていたこととか、男の子でよかったとか思うところもふふってなる。
(参考サイト)
https://yondemita.com/20141015-%E9%BB%92%E5%B7%9D%E5%8D%9A%E8%A1%8C_%E8%9E%BB%E8%9B%84_%E3%81%91%E3%82%89/
<『破門』同様、疫病神シリーズといわれる作品で、これは第4弾になる。シリーズにはなっているが、この作品も一冊で完結の内容になっているので前作を読んでなくても問題なく読める。
自称建設コンサルタントの二宮と、二宮から疫病神と煙たがられる経済ヤクザの桑原が今回も活躍?なにより、二人の漫才のような会話が面白い。
今回のシノギは、京都の伝統仏教の本山にまつわる寺宝に目をつけ、桑原がその権力争いに乗じて大金をせしめようとするもの。しかし、そう物事はとんとん拍子に運ばない。
京都の本山から独立しようとする東京の別院、それに絡む東京のやくざ。
このあたり、京都の大きなお寺さんあたりは、相当、お金を持っているんだろうなと思わせる。
事実、もっているのだろうが…。
庶民としては、こうしたお金のたくさん集まるお寺さんからは税金を徴収してほしいものだ。
参考資料には『東本願寺三十年紛争』というタイトルも見えたが、真宗大谷派あたりもモデルになっているのだろうか?うちも、お寺は真宗大谷派なんですけど…。
悪いやつばかりが登場する小説だが、イケイケのやくざとヘタレな主人公が、自分たちより悪い奴らをはめようと画策するのは、なかなか痛快。>