小谷充『市川崑のタイポグラフィ 「犬神家の一族」の明朝体研究』
2019年 02月 27日
2019/2/27(水)
校務。
19時から市縁堂2018の振り返り。
懇談会。大嶋啓介さんという人の紹介。居酒屋甲子園。てっぺん。
だいぶん前に買っていた本。
なかなかに面白い。
映画の研究の一つだが、映画のタイトルやクレジットなどを通じて、活字ってなんだったのかとかいろいろ知識が増える。
歌舞伎から来た二枚目、三枚目、明朝体が欧米から伝わったこととか、ゴチック体もアメリカが間違って日本に教えたという話(サンセリフ体というらしい)。
小谷充『市川崑のタイポグラフィ 「犬神家の一族」の明朝体研究』2010年、水曜社。
<アニメ「新世紀エヴァンゲリオン」、ドラマ「古畑任三郎」、CM資生堂「TUBAKI」など現在の映像表現に多大な影響を与えた映画監督、市川崑。彼の独特な明朝体表現は、テロップ表現の古典的スタイルとして定着しつつあるが、その研究・分析が行われることはほとんど無かった。
L字型極太明朝体の表現は何を指し示しているのか。
代表作「犬神家の一族」を中心とした数々の作品を材料に映画評論、デザイン評論の二つの視点から切り込む。
明朝体の字形照合実験やレイアウトグリットを用いての比較、そして作品コンセプト・技術・歴史までを丹念に分析した初の「市川崑の明朝体表現の研究書」である。>
<序章 「犬神家の一族」の周辺
市川崑タイポグラフィの影響/七〇年代の金田一耕助ブーム/問題のありか/明朝体の系譜
第1章 市川崑明朝体の正体
金田一耕助の推理/「犬神家の一族」明朝体の条件/書体のウエイトと容疑者たち/金属活字の時代/写真植字とは何か/容疑者たちの素性/エッジの処理と印刷適正/髭あり書体と髭なし書体/手型あわせと共犯者/混植組版の理由/事後共犯はミスか/市川崑の姓名/井上刑事が指し示す真実/書体に託した意味/『悪魔の手毬唄』『獄門島』『女王蜂』/市川崑明朝体の正体/市川崑の関与
第2章 市川崑明朝体のレイアウト
レイアウトの分析手法/出版物のフォーマット/レイアウトグリッドの機能/映像のなかの文字/『犬神家の一族』の特殊な画面比/四種類のレイアウトグリッド/気配りのレイアウト/グリッドの変遷とその理由/縦組横組のレイアウトパターン/L型配置の変化/市川崑がめざしたもの/『病院坂の首縊りの家』
第3章 市川崑タイポグラフィの作法
市川崑の作法/映画の文字の目的指向性/市川崑作品の書体分類と題字/特太の明朝体とにじみの作法/巨大明朝体の作法/小道具の新聞作法/読書行為を暗示する作法/L型配置の作法/極小題字の作法/タイプフェイスの導入/見出明朝体とL型配置の融合/混植と変形の作法/ゴシック系書体の作法/レイアウトグリッドの作法/「記録か芸術か」騒動とその後
第4章 市川崑の明朝体表現と日本再発見
「ルパン三世」のタイプライター表現/ディスカバージャパンの時代性/『木枯し紋次郎』と『股旅』/デザインのジャポニズム/ジャパン・タイポグラフィへ/『犬神家の一族』への結実
最終章 市川崑明朝体のその後