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大島真寿美『3月』

2020/1/23(木)

大島真寿美作品、2つめ。

3月』ポプラ文庫、2017年、ポプラ文庫、2013年単行本。

大島真寿美さん、1962年名古屋生まれ。40歳になる短大の同窓生の20年あとを描く。

等身大、就職氷河期なんだろうが、まだ、女性なので、どちらかというと仕事よりも家庭と孤独、諦め、偽り。『ゼラニウムの庭』と同じく家族だが、こちらは群像劇。そして、家族と別のつながりの大切さ。ここでは、東北大震災が最後にあって・・

 

【参考】

短大を卒業してからおよそ20年。同窓会の案内を受けとって以来、ノンは学生時代に亡くなった男友達のことが気になりはじめる。彼は自殺ではなかったのではないか?ノンは仲のよかった友人に連絡を取ると――

彼女たちの「日常」を、静かな時の流れとともに丁寧に描き出す、著者の思いあふれる傑作。

 

https://www.nikkei.com/article/DGXDZO60450550R01C13A0NNK001/ より

 20年間会わなくても友は友だ。その真実を、本書は鮮やかに描きだしている。

 特に、まだ将来の進路が決まる前、いわば人生の、いちばん危なっかしい時期を、たとえそのとき無駄話しかしなかったとはいえ、濃密な時間を共有した相手は得難い。20年ぶりに会った瞬間に、気持ちはゆるやかに溶けていく。

 20年もたてば、いろいろある。領子は長らく勤めた雑誌社が潰れて職を失っている。恋人もいないし、犬と暮らしている日々だ。花もまた一人暮らしで、両親の看護に追われ、昔の恋を時折思い出している。明子は子持ち男と結婚して特に不満もなかったが、その娘が友達への電話で明子のことを「あいつ」と呼んでいるのを聞いて、心がざわついている。子供の出来ない穂乃香は、それが自分の罪の現れではないかという思いの中にいる。彼女たちを東北に呼んだ則江は、夫を疑う日々にいる。

 20年ぶりに会ったからといって、彼女たちがかかえる問題は何ひとつ解決しない。しかし明日を生きるエネルギーを与えてくれる。その友情の原風景を、巧みな構成で描く大島真寿美の傑作だ。(文芸評論家 北上次郎)[日本経済新聞夕刊2013102日付]

 


by kogure613 | 2020-01-23 23:00 | こぐれ日録 | Trackback | Comments(0)

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