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宇野重規『保守主義とは何か―反フランス革命から現代日本まで』

2021/4/7(水)

読んだ新書。

宇野重規『保守主義とは何か反フランス革命から現代日本まで』中央新書、2016年。

21世紀以降、保守主義者を自称する人が増えている。フランス革命による急激な進歩主義への違和感から、エドマンド・バークに端を発した保守主義は、今では新自由主義、伝統主義、復古主義など多くのイズムを包み、都合よく使われている感がある。本書は、18世紀から現代日本に至るまでの軌跡を辿り、思想的・歴史的に保守主義を明らかにする。さらには、驕りや迷走が見られる今、再定義を行い、そのあり方を問い直す。>

順番は逆になったが、2020年の宇野重規『民主主義とは何か』講談社現代新書に続いて、ようやく読んだ。保守主義ってやはりあんまり興味がないし、違う立場だったからなあ。


【参考】 https://kogure.exblog.jp/240774656/

 

宇野重規さんは、菅義偉さんの最初の強権的措置だった、日本学術会議任命拒否事件のなかで初めて知った研究者さん。民主主義についても、実に冷静な分析だったが、保守主義では、より客観的に、書いていて、イライラすることも多いはずのネオコンとかそういう集団についても冷静に叙述している。

 

(参考)

「任命拒否」5人参加 学術会議、連携会員で 毎日新聞 2021/4/7

https://mainichi.jp/articles/20210407/ddm/012/010/107000c

< 日本学術会議の会員候補として推薦されながら、菅義偉首相に任命されなかった6人の研究者のうち、5人が学術会議の「連携会員」「特任連携会員」として活動に参加することになった。梶田隆章会長ら執行部は残る1人の加藤陽子・東京大教授(歴史学)にも特任連携会員への就任を打診したが、任命拒否問題が解決していないとして希望せず、見送られた。学術会議は引き続き菅首相に対し、6人を推薦通り会員に任命するよう求めている。

 会員の定員は210人で、第1部(人文・社会科学)、第2部(生命科学)、第3部(理学・工学)の各70人で構成。6人が所属予定だった第1部は任命拒否で約1割が欠員になった。学術会議は政策提言を取りまとめるなどの活動に支障をきたしているとして、再三にわたり任命を求めてきた。しかし菅首相側の「ゼロ回答」が続き解決の見通しが立たず、学術会議の本来の役割を果たすことを優先したとみられる。

 連携会員、特任連携会員は、学術会議が提言などの意見をまとめる際のサポート役として会員と一緒に活動しており、人数は計約2000人。任期は、連携会員が6年、特定の専門事項の審議にのみ参加する特任連携会員が3年以下で、いずれも会長が任命している。

 学術会議事務局などによると6人はいずれも連携会員の経験者。宇野重規・東京大教授(政治学)と岡田正則・早稲田大教授(法学)の2人は連携会員としての任期が2023年まで残っていた。しかし連携会員の選考手続きは任命拒否問題が発覚する昨年10月以前に終わっていたため、執行部は学術会議に籍がない4人も専門家として参加できるよう、特任連携会員就任を打診した。小沢隆一・東京慈恵会医科大教授(法学)と松宮孝明・立命館大教授(法学)を3月7日付で特任連携会員に任命。芦名定道・京都大教授(キリスト教学)も4月中に任命予定という。

 学術会議は今月8日に臨時の幹事会を開き、組織改革についての素案をまとめる。梶田会長が7日、井上信治・科学技術担当相と面談し、素案の方向性について報告する。一方で学術会議の要望に反して任命拒否問題に進展がないことに対し、会員からは解決を急ぐよう求める声が多く上がっている。【池田知広】>

 

読み終わってメモを作り出したが、保守主義の原点が、文化や歴史、伝統を大切にする地域づくりや自由なメンバーによるコミュニティ政策と繋がっていることがまず新鮮だった。

 

宇野重規『保守主義とは何か反フランス革命から現代日本まで』中央新書、2016

序章 変質する保守主義進歩主義の衰退のなかで

保守主義という言葉・・・バズワード、プラスティック・ワード・・「明確な定義もなく、人によってまちまち使われているにもかかわらず、思わず人がそれを口にしてしまう言葉」

 

かつては進歩主義が優位であった。だから、それに対抗する保守主義もまた台頭してきた。いまは、進歩自体に勢いがない。だから、保守主義も迷走し、大人になれば保守になるというような常識が通用しない時代になっている。

 

自分以外の何かを守る(保守)・・「自分の家族や仲間、地域コミュニティ、その歴史や文化、技能や伝承、さらに自然環境や景観」そういう何かを守るときに、人は少しだけ、勇気やホコリを感じる。P5

ところが、共通して守るべき「伝統」や「権威」が曖昧になり、いまは、個人ごとにばらばらになっている。

 

エドマンド・バークの保守主義・・(1)保守すべきは具体的な制度や慣習、(2)具体的な制度や慣習は歴史の中で培われている、(3)自由の維持が大切、(4)民主化を前提、秩序ある善心的改革が目指される。

 

1章 フランス革命と闘う

保守主義の原点は英国。

エドマンド・バーク(1729-97

『崇高と美の観念の起源』(1757)・・・カントに影響を与えた(『判断力批判』)

政治的経歴は不遇、ただ、言論人、文学クラブ員として、スミスの『道徳感情論』やモンテスキューの『法の精神』を受け継いだ。

 

バークは野党に属しつつ、政党の形づくりに寄与する。

『現代の不満の原因』(1770)・・政党の定義:メンバー全員が一致している「ある特定の原理にもとづいて、国家利益の促進のために統合する人間集団」

「代議士は選挙区から選ばれるとしても、あくまで国家全体の公共の利益を考えなければならない」p46

「バークの考えるところ、国家とは、いま生きているものだけによって構成されるわけではない。現役世代が勝手に過去から継承したものを否定したり、逆に将来世代を無視した行為をしたりしてはならないのである」p61

『フランス革命の省察』1790

「社会も人間性も複雑である。そうだとすれば、単純な原理に基づく単純な政府は、ただそれだけで問題がある」p56                                                                                                                                                                                                                                                                                                               

 

2章 社会主義と闘う

社会主義へのカウンターとしての保守主義、20世紀。

 

TS・エリオット(1888-1965

『文化の定義のための覚書』1948

69「詩人を含む芸術家とは、自らがホメロス以来の文学的伝統の流れのなかにあることを自覚し、己をこの伝統のなかに位置づけることではじめて、その現代性を敏感に感じることができる。さらにいうならば、伝統とは固定したものではなく、現代のなかで新たなものを付け加えることによってのみ更新される」

エリオットにとって、文化とは「一つの統一性ある生き方」であった。

コモン・センス:共通感覚 ヒューモア(ユーモア)の感覚

 

フリードリヒ・ハイエク(1899-1992

『隷属への道』1944:全体主義(集産主義)との対決

イソノミア:法の支配

「ハイエクの思想の本質は人間の知の有限姓やローカル性を重視する啓義主義であり、多様性や選択の自由を重視する自由主義である。その政治的主張の中心は、憲法による恣意的な立法を抑制しようとする立憲主義にあった。」

 

20世紀的なリベラリズム:国家の積極的介入により個人の自由を図る主義:この本では自由主義と使い分けている

マイケル・オークショット(1910-90

『政治における合理主義』1962

会話:「異なる言葉が行き交い、けっして単一の「声」へと収斂しないこと。人々がそれぞれのイメージをもちながら、他者をそのイメージに従属させないこと。」

実践知が大事:技術知と対比

社交体と統一体:社交体における「法」による「統治」の契機を復権 p108

 

3章 「大きな政府」と闘う

1980年ロナルド・レーガンの当選(「保守革命」:保守主義に「革命」は不適当だが)以降、「小さな政府」を掲げる保守主義の潮流。行き着く先は、ネオコン(ネオ・コンサーバティズム)。

リチャード・ウィーヴァー(1910-63

『理念は実現する』1948 反近代的な保守主義、荒廃したアメリカ南部農本主義の末裔

ラッセル・カーク(1918-94

『保守主義の精神』1953 伝統主義的なキリスト教信仰と、所有権の絶対性を説く経済自由主義 アメリカ人の孤立が生む宗教心。キリスト教でも主流派ではない、福音派の勃興。反知性主義。

 

【リバタリアニズム】

20世紀後半、リベラリズムが「大きな政府」の下で個人の自由を実現することに変化。

リベラリズムと区別するために、リバタリズムが使われる

リバタリズム:個人の選択と「小さな政府」の強調市場化や民営化に対する強いこだわり

 

ミルトン・フリードマン(1912-2006)・・経済的リバタリアン

『選択の自由』1980

価格メカニズムへの強い信頼:「人間と人間の共同行為に対する著しく低い評価と、それとは対照的な市場秩序へのきわめて高い評価」p120

 

ロバート・ノージェック(1938-2002)倫理的リバタリアン

『アナーキー・国家・ユートピア』1974

最小国家というユートピア 「保護協会」というモデル・・国家でなくても出来る組織と人々は契約すればいい

 

左右の分極化と保守主義内部の分極化

ティーパーティ運動

ネオコンの革命:母体は、ニューヨークに集う若き作家やジャーナリストの集団で、その多くはユダヤ系。

アーヴィング・クリストル(1920-2009

ノーマン・ポドレッツ(1930- )

共産主義やリベラリズムへの幻滅 米国の覇権が重要

現代アメリカの保守主義:市場化と宗教化の結合

 

4章 日本の保守主義

丸山眞男(1914-96)の保守主義論・・思想なき保守勢力 信念をもった保守主義を望んでいた

福田恆存(1914-94 つねあり)の保守主義論・・進歩主義の自己欺瞞、思想的連続性の欠如の指摘。江戸時代以来の民衆の生き方を評価

 

橋川文三(1922-83)による近代日本の保守主義

鳥尾小弥太(1847-1905):保守主義を急進主義と対比しつつ、必ずしも変化を否定しない

伊藤博文(1841-1909):周旋家、バークの「代議士は国民全体の利害の奉仕者」をよく口にした。立憲政友会の創設

陸奥宗光(1844-97):伊藤系官僚と自由党系の政治家を結びつけ、星亨や原敬を政友会に誘った。

重臣的リベラリズム:西園寺公望、牧野伸顕(大久保利通の次男、娘婿が吉田茂)

吉田茂(1878-1967):軽武装・経済国家 「吉田学校」

大平正芳(1910-80):経済成長以降の新たな国家目標の模索。

戦後社会の基盤となるコミュニティの役割に注目 日本的な組織のあり方や中間集団までの射程に入れた保守主義

「文化の時代」「田園都市構想」「環太平洋連帯」

 

終章 二一世紀の保守主義

ジョナサン・ハイト(社会心理学者)

『社会はなぜ左と右にわかれるのか』:米国の分断は感情的な対立

道徳の基盤:ケア、公正、自由、忠誠、権威、神聖の6つに分類できるとハイト

リベラルはもっぱら「ケア、公正、自由」を重視し、保守主義的な「忠誠、権威、神聖」を無視

 

206-7

保守主義の可能性を「地域おこしの現場」に見られないか?

その地域出身ではない人が活躍して、地元の人とともに、地域の魅力を再発見し守ろうとする。

つまり、保守主義における開放性と流動性の注入である。

「多様性に開かれた、自由で創造的な保守主義。人々をつなぎ、暮らしを支える保守主義。」


(参考)

東京大学教員の著作を著者自らが語る広場 https://www.u-tokyo.ac.jp/biblioplaza/ja/D_00201.html

<昨今、ある意味で「保守」という言葉が濫用されています。時には、排外主義や反フェミニズムの姿勢を指して、保守と呼ぶことすらあります。

政治勢力としての保守主義の歴史を振り返ると、最初はフランス革命を批判する勢力として生まれました。のちに社会主義、さらには大きな政府を支持するリベラリズムに対抗する立場が保守と呼ばれました。人権など抽象的な理念を掲げて急進的な改革を推進する勢力に対して、ブレーキをかけるのが保守主義の役割だったのです。

しかし、現在、そのような急進的な改革主義は力を失いました。結果として、保守主義は敵を見失い、自分らの定義も分からなくなっているのかもしれません。そして、保守という言葉が無限にインフレを起こしてしまっています。これになんとかストップをかけたいというのが、本書の狙いでした。

守るべきものは守る。しかし、変えるべきものは変えていく。それが保守主義の真髄です。現実を無視して抽象的な理念を振りかざし、ゼロから社会を作り変えようとするのではなく、これまで歴史的に構築されてきたものを活かしつつ、時代に合わせて改良していく。過去に対する深い洞察と現実主義という保守主義の知恵が、現在失われつつあるように思えてなりません。

保守主義というとエドマンド・バークの著作『フランス革命の省察』がしばしば取り上げられますが、彼はアイルランドの出身です。また、保守政治家というと、体制派というイメージがありますが、彼はほとんどの期間が野党、それものちに自由党になるホイッグ党に所属していました。バークは、アメリカの独立運動を支持しました。ときに国王と対立することも辞さなかったバークは、しかるべき役割を逸脱して、自由を尊重する良き伝統を崩そうものなら、たとえそれが国王であっても対抗したのです。

 それにも関わらず、バークはフランス革命が起きたとき、これを批判して『フランス革命の省察』を書きます。彼は改革を否定したわけではありませんが、既存の社会仕組みを全て白紙にして、抽象的なモデルに基づいた新しい国家を一から作り直すことには批判的でした。さらにバークは、一見、不合理に見えるような伝統や慣習でも、過去から続いているものにはそれなりに理由があることを重視しました。それが理解できないからといって、直ちに破壊するべきではない。その前提には、人間が不完全だという認識がありました。人間の理性や知性ですべてを把握することはできないのです。

 現代において、保守主義の意味がどんどん拡散していく中で、それぞれが自分なりに大切にしたいものを守る、それが保守主義だということも、悪くないのかもしれません。ただし、その際には必ず、お互いに何を大切にしたいのか、それを尊重した上で議論をすることが不可欠です。>

(紹介文執筆者社会科学研究所 教授 宇野 重規 / 2019)


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by kogure613 | 2021-04-07 21:30 | こぐれ日録 | Trackback | Comments(0)

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