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伊吹有喜『ミッドナイト・バス』

2021/6/28(月)

昨日、劇団太陽族×光の領地『イエロースプリングス』の行き帰りで読んだ小説。

壊れてしまった家族の物語という意味では、演劇と小説では同じかも。

 

もちろん、『ミッドナイト・バス』は、戦争というような大事件の結果ではなく、じわじわと衰退する日本の社会のなかの家族の崩壊。ただ、ここでは、ゆっくりとした修復、理解するための、束縛からの離脱が描かれる。作者、伊吹有喜さんを知ったのは、たまたま買った『小説新潮6月号』の「灯りの島」の味わい、尾鷲の神秘性だった。

 

ドラマの『リコカツ』とか『大豆田とわ子と三人の元夫』にも設定は似ている。離婚したあとのつながり。父母が別れて、父のもとに残った息子と娘。

母との和解というのは、長い時間、様々な出来事がいる。その、ゆっくりさがこの小説世界のキメの細かさ、リアルさだな。

 

確かに、サブストーリーが豊富。短いのもあるし、江崎大輔という歌手の歴史も面白い。

一番の決め手は、深夜バスと東京と新潟を結び離れるという交通インフラが主舞台ということだろう。新潟の美越というローカルな場所(架空かな)と、東京の小料理屋、白鳥交通の待機所をつなぐ。

 

伊吹有喜『ミッドナイト・バス』文春文庫、2016年、2014年単行本。

 

壊れた「家族」という時計は再び動き出すのか

映画化決定! 出演:原田泰造 山本未來 小西真奈美 葵わかな 七瀬公 長塚京三

東京での、忙しすぎるデベロッパーの仕事を辞め、故郷の新潟で、深夜バスの運転手をしている利一。ある夜、バスに乗ってきたのは、16年前に別れた妻だった━━。

会社を辞め、家に戻ってきた理由を言い出せずにいる長男、結婚と夢の間で揺れる長女、再婚した夫の浮気と一人暮らしの父の介護で悩む元妻、そして、利一も、若い恋人との結婚に踏み出せずにいる……人生の岐路で、忘れていた傷と向き合う家族たち。

家族の崩壊で、一度止まった時を、それぞれが進めることができるのか━━。

物語は、そんな家族たちの葛藤と再出発の姿と、各々の理由で深夜バスを利用する乗客たちの姿を交互に描いていく。

今はどんなに大変でも、明けない夜はない。家族の再出発とさまざまな人生を丁寧な筆致で描いた感動長篇。解説は、吉田伸子さん>

 

高宮利一:主人公。新潟近郊の「美越市」に拠点を置く「白鳥(しらとり)交通」の、新潟・東京間を中心に運行する高速バスの運転士。以前は東京の不動産開発会社に勤めていたが、郷里の美越に戻り運転士に転じた。学生時代の後輩であった美雪が身籠ったため若くして結婚し、怜司、彩菜をもうけるが、自身の母と美雪の不仲が原因で離婚。現在は東京で料理店を営む志穂と交際している。

 

加賀美雪:利一の元妻。再婚して加賀姓となり、現在は東京で夫と子供の三人暮らし。更年期障害に悩まされながらも、父である敬三の看護のため度々新潟に帰省するが、乗車した夜行高速バスで16年ぶりに利一と再会する。

 

古井志穂:利一の交際相手で、東京で母から継いだ料理店を営む。結婚・離婚歴がある。父は利一のかつての勤め先の上司で、利一とは当時から面識があった。利一を一途に想い続けている。

 

高宮怜司

利一、美雪の息子で、彩菜の兄。父親ゆずりの長身の体躯と、鋭い観察眼の持ち主。腰から背中にかけての皮膚疾患に悩まされている。東京で就職していたが勤め先を辞め、実家に戻ってくる。

 

高宮彩菜:利一、美雪の娘で、怜司の妹。交際相手の雅也とは結婚を控えている。絵里花、沙智子とともにアイドルユニット「マジカルワンダー娘(ガールズ)」を結成し、同名のウェブコンテンツとグッズショップを運営しながら新潟市内でルームシェアをして暮らしているが、度々実家に戻ってくる。

 

山辺敬三:美雪の父で、怜司、彩菜らの祖父。利一のかつての義父でもある。妻に先立たれ、一人暮らしをしていたが持ち家を手放し、マンションに移った直後に事故に遭い入院。

 

江崎大輔:往年の人気アイドル、ロックバンドのボーカリストで、利一もその名を知るほど。現在は音楽の専門学校で講師を務めるかたわら、ソロ歌手として全国各地でミニライブを行う。


by kogure613 | 2021-06-28 21:30 | こぐれ日録 | Trackback | Comments(0)

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