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小熊英二・樋口直人 編集『日本は「右傾化」したのか』

2021/6/29(火)

小熊英二・樋口直人 編集『日本は「右傾化」したのか』


特に、若者にとって、アベスガ政治しか知らないこともあり、結局、「自民党か無党派か」という選択肢になっているという小熊英二さんの出だしが悲しすぎる。

 

いろいろ、勉強になる論稿がいっぱいだが、実はまだ拾い読み状態。

ただ、右派のことは知らないことが多いので、頭の整理になる。

たとえば、樋口直人「政治主導の右傾化」では、草の根極右の紹介がある。

 

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「大音量で軍歌をかけて町中を走る街宣右翼、政治との関わりが深い右派ロビー、近年登場した排外主義運動からなる。この三者は、ナショナリズム、②伝統主義(家父長主義、尊皇主義)、③反共主義、④歴史修正主義、⑤排外主義(外国人排斥、対外強硬論)を掲げて活動してきた」。
 

街宣右翼:保守政治の裏の実力行使を引き受けることで存続

右派ロビー:軍人関係団体(日本遺族会など)と宗教右派(神社本庁など)

排外主義運動:「在日特権を許さない市民の会」とその後継団体である日本第一党

 

小熊英二・樋口直人 編集『日本は「右傾化」したのか』2020/10/15 慶應義塾大学出版

誰が、何が、どう、変わったのか?
ヘイトスピーチ、排外主義運動の顕在化、
日本会議の台頭、改憲潮流、
ネットに溢れかえる右派的言説――
はたして本当に、日本は「右傾化」したのか。
個々の政権の消長を超えた次元で、
日本社会全体の構造変化のなかで捉える。
 
日本は「右傾化」しているのか。
概していえば、社会全体の有権者レベルの調査では、顕著な「右傾化」はみられない。しかし、政党や宗教団体など特定の対象のレベル、あるいは報道のレベルでは「右傾化」が指摘されることが多い。政治家などの右派的言動も目立つ。
本書は、このような一見すると矛盾した現状について、学際的な知見を集め、1意識、2メディア・組織・思想、3政治という三つの視角から、「右傾化」の実態を徹底検証する。


総 説
「右傾化」ではなく「左が欠けた分極化」 小熊英二
世論は「右傾化」したのか 松谷満
「保守化」の昭和史――政治状況の責任を負わされる有権者 菅原琢
政治システムとの強いリンクがもたらした構造的「右傾化」 林香里・田中瑛
ネットメディアの伸長と右傾化 津田大介
政治主導の右傾化 樋口直人
神聖天皇と国家神道からみた日本の右傾化 島薗進
自民党の右傾化とその論理 中北浩爾・大和田悠太
地方議会における右傾化――政党間競争と政党組織の観点から 砂原庸介・秦正樹・西村 翼
島根県の「竹島の日」条例制定の経緯 ブフ・アレクサンダー
おわりに 樋口直人

 

357(おわりに 樋口直人)

<今では、結婚するか否か、その時期、形態、相手の性別や国籍まで個々人が決めるように変化しつつあり、モデルのない状況で自分なりの家族生活を築かねばならない。
 こうした状況を個人化というが、それに即した法制度の改正が日本では遅々として進んでいない。夫婦別姓については、法務省の法制審議会が1996年に導入を提言する答申を出したにもかかわらず、自民党右派の反対により実現していない。同性パートナーシップについては、2015年に東京都渋谷区と世田谷区で導入され、他の自治体にも広がっているが、同性婚の法制化は議題にすら上っていない。
 そうした日本を尻目に、韓国では2005年に戸主制度が廃止され、家父長的な戸籍から個人単位の家族制度へと移行した。台湾では、2017年に最高裁が同性婚を承認し、2019年に法制化されている。こうした変化の背景として、「圧縮近代」と呼ばれる東アジアの急激な経済発展がある。東アジアは、欧米が100年かけた経済成長を30年程度で実現したことにより、社会のなかで変化した部分とそうでない部分が混在するようになった。家族が急激に個人化す。
る一方で、旧態依然たる法律や社会保障制度を変えられないがゆえに、世界最速で進む高齢化と少子化に対応できていない。今世紀に入って、家族やジェンダー、移民、人権関連の法律を次々に整備した韓国や台湾の奮闘ぶりは、こうした変化に追いつこうとする政治のありようを示唆している。>

 


by kogure613 | 2021-06-29 21:30 | こぐれ日録 | Trackback | Comments(0)

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