劇団態変『マハラバ伝説 黎明編』雷魚テント@扇町公園

9/28(金)
高校の授業は、府県別観光研究。図書館がにぎわっている。
観光というほど特化しなくていいから、なじみのない府県にできるだけ馴染んでもらおうという狙いがあるのだが、来週の発表が楽しみ。
司書の方にはいつもお世話になっているが、京都橘高校からうちの文化政策に入った学生が、ここに来てきちんと出典を記入していたことに感心したと教えてもらう。

一度家に帰って昼寝。どうも暑かった夏の疲れが溜まっているようだ。何もしなかったのにね。
少し、頭もすっきりして、扇町公園へ。
雷魚テントが待っている。風が強くて天井が時折唸りだすのも公園ならでは。これは、浦部さんらの劇団浪花グランドロマンのテントで、入ると実に見やすい椅子のつくりとなっている。池袋のホールで見たとき、床が見えない席ばかりで、これは、態変さんの演技をまったく知らないで選んだホールではないかと思ったが、今回も含めて、態変のステージを熟知しているステージマネジメント。

見ていて、もちろん、ステージの奥が空いて、木立と芝生が見え、そこにも照明がほどこされて、芝居の奥深くへと放り出される開放感もまた最高なのだが、それがなくても、音響の音、鳥や犬のなきごえが、実際の公園の犬のうなり声とまじり、風のあおりでテントの皮が響くことで、いまいる場所が野外と屋内のちょうど中間、いや、どこでもない場所にこうしてステージ上を見つめてみんなでいる感覚にどきまぎする。

劇団態変『マハラバ伝説 黎明編』作・演出:金満里。19時から21時すぎまで。間に15分の間。02年にアイホールで見たがそのときと時間的には変わらないはず(音楽の使用がタイムキーピングとなっていると思われるため)なのだが、ずっと、コンパクトに感じられた。

出だしから、シャープな切れ味。上手から放り出される福森慶之介。同じように下手から木村年男。対称的なのに、独自の身体。とりわけ木村の動きがそのあとも含めて眼を引くほど多弁であった。村長役だからか、とあとで金の説明のとき合点した。前回は福森が村長役だったらしい。

出ている人は前に見たステージと同じようで、役柄が微妙に違うし、演技にも気がつかなかった多くの発見があった。つぎにどうゆうシーンが出るかはだいたい分かっているはずなのに、でも、常にはっとさせられっぱなしだった。不思議なこと、驚きは、目新しさとはまったく違うところからやってくる。

ばらばらに逃げて行く人たちが、気がつくと輪になっている不思議。演じているようにはまったく見せないで~稽古の積み重ねによって可能になるのだろう~、つぎの展開へとスムーズに形象をかたどる鮮やかさ。演出力とともに、即興的であると同時に計算的であり、意図的であるとともに即自的であるという巧妙さ。

誤解を生む言い方を承知しながらあえて言えば、態変のステージは古典芸能を鑑賞する楽しみに自分は近づいているように思われる。古典落語を何度聴いても思わず笑ってしまう、その自分ながらに不思議になる感覚である。政治家が安易に「命がけ」で取り組むとかよく言うが、態変の一人ひとりは黒子も含めて、まさしく「命」そのものである。ただ一人の命を放り出しているだけではなく、その背後に消えてしまった多くの命までがステージを這い回る。態変の変が普遍の遍でもある瞬間。

しかしながら、それ(=普遍性)だけではなく、今回はテントであるということもあって、それぞれの身体が「生」である度合いが強いように思われた。ステージやテントからあふれ出んばかりの役者の体。この世界から溢れるぐらいに生命感があり、その疎外、抑圧への憤りも強いのだろう。もちろん、祭りのときの喜びは労働の労苦を反転させて爆発させる。その繰り返しが肉化した「思想」になったはずだが・・・

休憩後の第二部はスモークのなかのレクイエム。第三部は葛藤のなかで転調するドラマ。それでも、心奪われる見所は多い。よそからやってきた女(北角和恵)の滑らかな動き。デュエットの前から、他の登場人物とは別の匂いがしていた。多様な障碍者の肌理、感覚の差異を、彼女の登場がじつによくかもし出している。

そうそう、後ろの席に視覚障碍者がいて、休み時間に一人の女性(視覚障碍者と一緒だったのではないようだった)が、ストーリー(その彼女が自分で感じ取ったステージではあったが実に的確なもの)を話してあげていた。その障碍者は台詞がない劇団であることを付き添いの方も含めてご存知なかった模様。そのあとも、小さな声で彼女はその人に同時通訳的なこともしていたようだったが、それがまったく気にならない。

眼の見えない人もこの場を共有してくれていることのありがたさ、そして、さりげないサポートがその場で起きることの気持ちよさ。そんな偶発的なことも起きた公園をあとに、今日、雨が降らなかったことに感謝しながら、天満駅へといそいだ。
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by kogure613 | 2007-09-28 19:45 | こぐれ日録 | Trackback | Comments(0)

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