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若林幹夫『社会学入門一歩前』&『コミュニケーション力を引き出す―演劇ワークショップのすすめ』

2010/2/17(水)
今日は研究室のワックスがけの日。ツイッターの誰かのつぶやきに反応したりしている。たとえば、「すぐ役に立つものは、すぐ役に立たなくなる」。「なんでも効くという薬はなんにも効かない」・・

カーリング・チーム青森の健闘を眺めた後、大学へ。関西広域機構の文化観光担当の方からこれからの関西広域連合(仮称)の動きなどを教えてもらう。知事たちの温度差や思惑までわかってなかなかに面白し。徳島県の後輩の知事の名前がでてこなかった(飯泉君だったな)。

昨日、「交響圏」のこと、見田宗介さんの『社会学入門―人間と社会の未来』の最後のところをメモった。

が、じつは、さきに、若林幹夫『社会学入門一歩前』(NTT出版、2007)を読了して、おお、この著者、若林さんは、大学1年生のときに見田先生に習ったという話があり、「離れてあることの自由」の問題は、この『社会学入門』の「補 交響圏とルール圏」が参考になるとあって、研究室にいって読み直したのだった。

で、この若林さんの本なのだが、じつに面白く(私の若いときに読んだ本などと近い世界だからでもあるが)、「うたっているのはその歌い手なのだろうか? それとも歌が、歌い手の口を借りてうたっているのだろうか?」(p45)という問いかけなど、実にアーツの鑑賞論としていつも自分も思っていることなので、嬉しかった。「離れてあるという文化」というフレーズに特に反応したので、それを含むパラグラフを引用させてもらっておく。[第十四章 離れてあること、退きこもること」からp197下線は小暮 
・・・非行や非行集団もまた、社会の中で青年や少年が「離れてあること」の形であり、文化であった。・・・同じように、かつての旧制高校生や大学生のように端から見れば空疎な人生論や学問論、政治論に耽溺する「若者」も、実世界から「離れてある」ことの型であり、文化だった。

 だが、現代の日本ではそのような「離れてあること」の文化が衰退し、さまざまな「離れてあること」を可能にする場所も少なくなっている。実用性と実利性の中で「自分の個性」を探し、「コミュニケーション能力」と呼ばれる自己プレゼンテーションの能力を高めることを早い時期から求められる現代の社会の中で、「離れてあること」はかつてあったような社会的な受け皿と場と意味づけをもたなくなった。・・・・・・・

 「役に立つこと」と「コミュニケーションすること」が支配的な価値をもつ社会
で、「離れてあること」はときに暗く、無意味で、立場のないもののように感受され、理解されてしまう。「ひきこもり」という問題は、私たちの社会で「つながること」と「離れてあること」の関係のあり方を―世界と社会から退きこもって―考えるための、ひとつの問いの場を提起している。
平田オリザ・蓮行『コミュニケーション力を引き出す―演劇ワークショップのすすめ』(PHP新書621、2009年)をようやく読む。『社会学入門一歩前』と対照的なノウハウ本。「役に立つ」こと、コミュニケーション能力のことがこれほど臆面もなく書かれていると逆にすっきりするぐらい。

もちろん、平田さんは、単なるプレゼン能力ではない新しいコミュニケーション力に関わる演劇ワークショップだとしているし、蓮行さんは「暗黙情報」(言語化できる形式情報の背後にある膨大な情報)の重要性とその演劇的対応の可能性を指摘していて能天気なコミュニケーション力に演劇力を!という礼賛本でもないにだけれど。以下少し引用

蓮行「第3章 仕事に役立つ演劇力」より
p160  演劇ワークショップには、コミュニケーションが個人の能力のみに依存するのではなく、コミュニケーション環境に大きく左右されるのだということを、短時間のうちに実感したり、人がやっているのを見て「気づく」ことができるという、優れた効果があります。
p161  演劇は、個々のコミュニケーション能力を向上させるだけではなく、コミュニケーション環境の検証・整備能力をも向上させるのです。
 そして、コミュニケーション環境を設計することを、「コミュニケーションデザイン」と呼ぶわけです。演劇という舞台芸術は、登場人物達の、そして、演者と観客のコミュニケーションデザインに、有史以来ずっと取り組んできたジャンルなのです。
また、定義もあって、なかなか「有用」な新書。たとえば・・
演出(家)=集団で創作する作品に、最終的かつ統一した世界観を与える作業(をする人)
by kogure613 | 2010-02-17 20:37 | こぐれ日録 | Trackback | Comments(0)

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